大岩ジャパン、パリ五輪アジア最終予選メンバー発表 「制限」と「決断」の選考を読み解く

川端暁彦

ベースとなったのは直近の3月のメンバーだが、“マイナーチェンジ”が施された 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

「自由に選べない」中でのベスト

「この23人の選手たちでタフな戦いをしっかり戦い抜く自信を持っている。グループ一丸となって一戦一戦を戦っていきたい」

 4月4日、U-23日本代表の大岩剛監督は、AFC U-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選を兼ねる)に臨むメンバー23名を発表した上で、そう語った。

 かつてないほどの「難産」だった。

 コロナ禍の影響でA代表のアジアカップが昨年6月の予定から今年1月にズレ込み、元々今年1月に予定されていたAFC U23アジアカップが4月へとスライドすることとなった。

 1月であればJリーグはオフシーズンだが、4月はリーグ戦の真っ最中である。「同席した山本昌邦ナショナルチームダイレクターが「Jクラブの理解を得るためにしっかり話し合う必要があった」と言うように、Jリーグの強化担当者たちと協議を行い、昨年9月に大筋の合意を得ている。

 最終的に決まったのは1クラブ最大3名までというのが基本的な約束事で、今回の選考もその合意に沿って行われた。また、この年代は若くして欧州でプレーしている選手も多く、10名以上がこの代表の候補になっているのだが、欧州はもちろんリーグ戦の真っただ中である。しかも、ちょうどシーズンのクライマックスの時期であり、ほとんどのクラブが選手招集に応じなかった。

 山本ダイレクターは「監督が自由に選手を選べない状況だったし、昨日も深夜まで(誰を選ぶか)悩んでいた」と気遣ったように、複雑なパズルのような作業でもある。先月の取材で、大岩監督はその作業についてこう漏らしている。

「(クラブの人数制限もある中で)各ポジションの重要性と、そこで他に呼べる選手がいるのかどうか。『この選手が入ったら、(人数オーバーになる)この選手をどうするか』も考えなければいけないし、海外組はいない前提で考えなくてはならない。本当に頭が痛い」

 最終準備機会となった3月の国際親善試合には「4月の最終予選に、『おそらく呼べる』という前提の選手を招集」(大岩監督)。この大会に向けた総仕上げの準備を行ってきた。大会直前の段階になってなお「おそらく」という表現を使うしかないのは、何とも悩ましい部分だった。

 そうした前提の上で、監督が考える「ベスト」の23名がチョイスされることとなった。

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3月からの小さな変化

メンバー発表記者会見に臨んだ大岩剛監督 【写真は共同】

 23名中20名は3月の親善試合で招集したメンバーだが、いくつかの“マイナーチェンジ”はあった。

 新たに加わったのはGK山田大樹(鹿島)、DF木村誠二(鳥栖)、FW内野航太郎(筑波大)の3名である。

 このうち、木村はチーム結成当初から大岩構想に含まれていたセンターバックだが、今季開幕を前に負傷離脱。先日復帰を果たしたばかりという状態だが、「(鳥栖の)スタッフとはしっかり情報共有を図ってきた」(大岩監督)と、大会へ十分に間に合うという判断での招集となった。

 ディフェンスラインではA代表経験もあるバングーナガンデ佳史扶(FC東京)が選外となったが、これはいわゆる「人数制限」を受けての苦渋の判断。FC東京からは、この代表の正GKと見込まれる野澤大志ブランドン、中盤から前線にかけて攻撃のキーマンとなるMF松木玖生、そして今季リーグ戦6試合で5得点と絶好調のFW荒木遼太郎がおり、いずれも外しがたい選手たち。バングーナガンデが外したい選手だったはずもないのだが、最終的にはポジションのバランスも見ながらの決断となったようだ。

 バングーナガンデの抜けた左サイドバックは大畑歩夢(浦和)が軸となる。左の専門家は彼1人だが、両サイドをこなせる内野貴史(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)がバックアップを担うことになりそうだ。またこのチームで起用されてきたポジションではないが、中盤で選出された田中聡(湘南)も経験はある。右は半田陸(G大阪)が軸。2番手は急成長株の関根大輝(柏)と思われるが、関根はセンターバックもこなせるため、3バックを含めた起用の幅がある。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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