「うわっ、すっげえ~!!」の原点へ Jリーグ開幕、期待膨らむハイライト

川端暁彦

新設のエディオンピースウイング広島での試合から幕は開ける 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

2024開幕は広島の新スタから

 2月23日の天皇誕生日、Jリーグにとって32回目の春が始まる。

 新設されたエディオンピースウイング広島でのサンフレッチェ広島と浦和レッズの14時からのゲームを実質的な開幕戦としつつ、夜には豊田スタジアムで名古屋グランパスと鹿島アントラーズが激突。翌24日の土曜日、25日の日曜日にJ2・J3を含めた各試合が続く流れだ。

 そんなシーズンの行方を占うと言えば、かつては「スーパーカップ」が定番だった。今季も開幕1週間前の17日に開催されたFUJIFILMスーパーカップで、昨季初めてリーグ戦で頂点に立ったヴィッセル神戸と、天皇杯を制した川崎フロンターレが激突している。

 リーグ戦とカップ戦の覇者が相撃つのだから、当然ながら“優勝候補の1週間前”が観られる機会であることに変わりはないのだが、内実は少し違う。川崎フロンターレはこの試合に先立つ13日に中国まで遠征してアジアの頂点を決めるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16の第1戦、山東泰山との試合を行っているからだ。

 スーパーカップの3日後の20日には、この第2戦を戦っており、生き残りを懸けた「真剣勝負の死闘」に挟まれる形になったスーパーカップには、メンバーを総入れ替えして臨むことにならざるを得なかった。

 現在「秋春制」へ移行したACLは大会の佳境にある。このため、かつてJリーグ開幕やスーパーカップはグループステージや予備予選の段階で重なっていたのだが、現在は負ければ終わりのノックアウトステージで重なるようになった。シーズンに向けた準備という意味でも、ACL参加チームは難しい対応を迫られるようになったとも言えるだろう。

 このため、スーパーカップの試合内容から今季を占うという話は難しいわけだ。

されど試合のバリューは損なわれず

見事に日本でのプロデビューを飾ったファンウェルメスケルケン際(中央) 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 ただし、だからと言って、この試合に価値がなかったとか、クオリティを欠いたなどと言うつもりは毛頭ない。むしろ川崎Fのフレッシュな選手たちのパフォーマンスは特筆ものだった。

 たとえば桐蔭横浜大から新加入となった大卒ルーキーのMF山内日向汰は先発出場。「夢のような時間だった」と初々しく語ったが、プレーは随分とふてぶてしく、シーズンの中でポジションを奪う可能性を十二分に感じさせた。

 オランダからの加入となったDFファンウェルメスケルケン際のプレーも印象的だ。決勝点を奪って1-0での勝利の原動力となったことは当然ながら特筆すべきポイントなのだが、それ以上に姿勢と言動でポジティブな空気感を作れる選手であることを再確認。ヴァンフォーレ甲府の育成組織で育ち、オランダでプロになった選手が、29歳にしてJリーグデビューを果たすという冒険心に富んだキャリアの持ち主は、あっという間にサポーターの心も掴んでしまったようだった。

 一方、敗れたヴィッセル神戸も特段に悪かったわけではない。DF酒井高徳は「もちろん負けて悔しいですが、どうしても負けると『変えなきゃいけない』となるけれど、今日の試合内容がそこまで悪かったとは思っていない」と語ったが、これも別に強がりには聞こえなかった。

 リーグ王者として初めて臨むシーズンに独特の難しさが生じるのは想像に難くないのだが、優勝で浮かれた空気を引きずる雰囲気もない。試合後の選手たちの話を聞きながら、「開幕には合わせてくるのだろうな」という感覚を自然と持たせてもらった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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