大岩ジャパン、パリ五輪アジア最終予選メンバー発表 「制限」と「決断」の選考を読み解く

川端暁彦

最前線のセレクト理由は

昨年のアジア競技大会でも活躍を見せた筑波大の内野航太郎(右) 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 今回の発表で最も意外な招集となったのは内野だった。

 主力選手のほとんどが不参加だった昨年のアジア競技大会で初招集を受け、銀メダル獲得に貢献。その後も一度だけ追加招集の形で呼ばれているが、負傷もあってメンバー入りからは遠ざかったかに見えていた選手だ。

 ただ、状態は決して悪くなく、先月行われたデンソーカップ日韓大学定期戦では韓国大学選抜を沈める2ゴールをマークするなどセンターフォワードとしての好調ぶりをアピール。ギリギリで滑り込む形でのメンバー入りとなった。

 大岩監督は内野の動向を注視していたことを強調していたし、それは実際その通りであるとは思うのだが、3月の時点ではいったん彼を外す判断を下していたことも事実だ。ここに来て何か変化があったのだと思われる。

 これまでセンターフォワードの軸と考えられるのは、A代表の一員として今年1月のアジアカップにも参加している細谷真大(柏)だ。3月の段階では、右ウイングとの兼任になる藤尾翔太(町田)と、インサイドハーフとの兼任で起用されていた染野唯月(東京V)が、細谷のバックアップを兼ねつつ、途中出場のジョーカーとして変化も付けられる存在だった。

 ただ、今季の細谷はここまで柏でも代表でも無得点と、彼本来のパフォーマンスを発揮し切れていない。当然ながら細谷がここから調子を上げていくのが指揮官にとって理想のシナリオだが、そうもいかない可能性はある。

 そうした状況を踏まえ、純粋なセンターフォワード役になれる好調の内野に白羽の矢が立ったのではないか。昨年のアジア競技大会を通じて「アジア」の相手への経験値を積み上げた選手であるという点もあり、土壇場での返り咲きになったのではないかと推測する。

 こうしてかつてない悩ましさを抱えての選考となった今回のU-23日本代表だが、落選した選手に実力者がズラリといることも考えると、あらためて世代としての層の厚みも感じられる。

「自信を持って戦っていく」という指揮官の発言もハッタリではあるまい。グループステージからUAE、中国、韓国との戦いになるが、難敵ぞろいなのは「逆にシンプルでいい」と前向きに解釈する。

「最大6試合に向けて、どうやってパワーを使っていくのか、どういう選手選考をすべきか。そういうシミュレーションはできているつもり」

 組み合わせ決定後、大岩監督は早くもそう語っていた。「アジアを勝ち抜く難しさ、最終予選の難しさは理解した上で」(同監督)、16日から始まるカタールでの戦いを突破し、アジア3.5枠のパリへの切符を取りにいく。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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