準々決勝では10連覇中のENEOSに肉薄 白鴎大の皇后杯バスケ快進撃が示すもの

大島和人

白鷗大はベスト8で皇后杯を終えた 【(C)ダブドリ】

 皇后杯全日本バスケットボール選手権大会は、高校や大学のチームも参加するオープンなトーナメントだ。第90回大会のベスト8は女子の日本最高峰リーグであるWリーグの7チームと、白鴎大学だった。

 白鴎大は2次ラウンドで日立ハイテククーガーズ、東京羽田ヴィッキーズと2次ラウンドでWリーグ勢を2チーム倒している。日立ハイテクは現在レギュラーシーズン7位、羽田は10位のチームで、彼女たちが「Wクラブと普通にやれるレベル」にあることは間違いなかった。ただし白鴎大が準々決勝で対戦したENEOSサンフラワーズは、皇后杯を10連覇中の絶対王者だ。

「強行日程」の中でENEOSに立ち向かう

 さらに白鴎大は極めて厳しいスケジュールでこの準々決勝に臨んでいた。大学バスケの日本一を決めるインカレ(第75回大学バスケットボール選手権大会)は12月10日に終わったばかりで、チームは決勝まで休養日なしの4連戦を戦った。東京医療保健大との決勝を79-69で制した勢いはあるにせよ、厳しい条件であることは間違いなかった。

 ENEOSにはセンター(C)渡嘉敷来夢、パワーフォワード(PF)長岡萌映子、ポイントガード(PG)宮崎早織といった日本代表級の人材たちがいる。彼女たちはフルメンバーでこの試合に臨み、3人は30分以上プレーしている。逆に白鴎大は連戦の影響もあり、オコンクウォ スーザン アマカ(C/桜花学園)のプレータイムを24分弱に抑えざるを得なかった。インカレ決勝は7人で回したチームが、準々決勝は12人を起用する展開だった。

 それでも白鴎大は立ち上がりからENEOSと五分に渡り合う。まずアマカや田中平和(PF/桜花学園)らのインサイド陣がゴール下のリバウンドやディフェンスで健闘。ボール運び、パスも安定し、3ポイント(3P)シュートも高確率で決めていた。プレッシャーディフェンスなどの「強度」も素晴らしかった。

 第2クォーター残り6分19秒からは樋口鈴乃(シューティングガード/精華女子)、田中、そして樋口と3連続で3Pシュートを決めて36-29と突き放す。ENEOSが巻き返して39-41の2点ビハインドでハーフタイムを迎えることになったが、白鴎大は間違いなく「やれて」いた。

第3クォーターまでは互角

佐藤智信HCは30年近く白鴎大女子の指揮を執っている 【(C)ダブドリ】

 白鴎大はハーフタイム明けから8ポイントのラン(連続得点)で再点火し、47-41と再びリードを広げる。ENEOSも渡嘉敷来夢のスティール、星杏璃の3Pシュートなどで打ち返し、第3クォーター終了時点のスコアは59-59と同点だった。

 ただ、第4クォーターははっきりと差が出た。白鴎大の佐藤智信ヘッドコーチはこう振り返る。

「向こうが少し焦ってくれたらなと思いましたけど、そうはならなかったです。冷静に3ポイントを決められました」

 ENEOSは第4クォーターだけで3Pシュートを8本中5本成功。最終的には74-84のスコアで、白鴎大が敗れた。

 ENEOSのティム・ルイスHCは試合後にこう語っていた。

「白鴎大はコーチングも素晴らしいし、Wリーグレベルの選手も5、6人いて、とても強いチームでした。インカレから連戦で、優勝した勢いを持って試合に入ってきました。ウチは2週間ぶりの公式戦で、リズムを取り戻すのに時間がかかりました」

シュート力を発揮して74得点

 佐藤HCは試合をこう振り返る。

「ENEOSさんに対して準備してきたものは、選手がコート上で表現してくれたと思います。どこを抑えても隙がないので、勢いづけさせるイージーレイアップを止めようと(対策を)絞りました。最後に3ポイントが来て離されましたけど、そのコンセプトは1試合を通してできました。イージーレイアップは絶対に押さえる。リバウンドショットは抑える。3ポイントは仕方がないよというゲーム運びで、トータルするとよく出来たと思います」

 ENEOSはこの試合、42.9%の高確率で3Pシュートを決めている。特にSGの星杏璃は「6分の5」とこの試合のラッキーガールになった。ただそこには戦略的な判断があった。

「(ゲームプランを)変えたところで、強力なインサイドがダイブで飛び込んできます。コンセプトを変えるより、1試合(用意したプランを)通した方がいいなと考えました。アマカがリバウンドをしっかり取れたし、スリーを決められた後も運んで点数を取れたので、それでいいかなと」

 74-84という最終スコアについてはこう述べていた。

「よく頑張ったと思います。もうちょっと点数を抑えたかったですけど、ウチの74点は出来すぎです」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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