準々決勝では10連覇中のENEOSに肉薄 白鴎大の皇后杯バスケ快進撃が示すもの

大島和人

4年生は5人中4人がWリーグへ

「アウェイ」に近いスタンドにもひるむ様子はなかった 【(C)ダブドリ】

 白鴎大は樋口が20点、田中が14点を挙げ、こちらも3Pシュートを40%の高確率で決めている。小林美穂(千葉英和)もベンチスタートながら3Pシュートを3本すべて成功させている。ENEOSの強力な守備に対してしっかり決め切っていた。

 戦術的な駆け引きがハマった部分もあるが、とはいえENEOSが決して悪かったという内容ではない。白鴎の「地力」がはっきりと見て取れた試合だった。そもそも皇后杯の2次ラウンドではWリーグのチームに2勝しているのだから、チームのレベルは間違いない。

 白鴎大は「少数精鋭」の体制で、現在の部員は17名。ただ4年生5名のうち、4名がWリーグのクラブに進む。田中平和と三浦舞華(SG/精華女子)がトヨタ自動車アンテロープス、桐原麻尋(SG/明秀日立)が富士通レッドウェーブ、樋口鈴乃はプレステージ・インターナショナル アランマーレに進む。田中は名門・桜花学園の出身だが、高校時代は試合にほとんど絡めていなかった選手。そのような人材も含めて「5分の4がトップリーグ」という成果は称賛に値する。

チームのカルチャーは?

ベンチも含めた一体感、エネルギーは印象的だった 【(C)ダブドリ】

 シビアな展開の中でも笑顔が多く、常に「前向き」なエネルギーがコートに出ているカルチャーも印象的だった。応援団や社員が駆けつけて大人数で盛り上げていたENEOSに対して、白鴎大はベンチメンバーの盛り上げから場内の空気をつかんでいた。

 白鴎大の女子バスケ部を過去に何度か取材しているバスケ雑誌『ダブドリ』の宮本將廣編集長はこう証言する。

「佐藤先生がまず核で、全選手に目を向けられています。どんな選手からも信頼をされているコーチはなかなか珍しいと思います。コーチやトレーナーも選手のケア、声掛けをしっかりしていて、試合に絡めていない選手も戦う姿勢を取れていることが素晴らしいですね」

 佐藤HCが「もう本当に普通の大学生と同じです。2時間くらいの練習で、月曜日はオフ。学食でまとめて食べるときもありますけど、寮は食事が出ないので朝や昼は自分で作ります」と説明する体制は、強豪社会人チームに比べると決して恵まれたものではないだろう。ただし「試合経験を積める」ことは何事にも代えがたい大学バスケの強みだ。

 東京オリンピックの銀メダルメンバーも本橋菜子(早稲田大)、林咲希(白鴎大)と大学出身選手が2人いた。「Wリーグに行けるレベルの選手が大学を選ぶ」ケースも増えているという。どの競技も女性アスリートのキャリアが長くなった中で、それは自然に生まれたトレンドだろう。

 大学バスケの可能性、価値を強く感じた白鴎大の戦いだった。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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