西浦颯大『もう一回野球させてください神様』

「ただの疲労骨折じゃない」 将来有望な外野手へ「8割復帰は無理」の告知

西浦颯大

【写真は共同】

小学6年生でソフトバンクジュニアに選出されるなどセンス抜群の野球少年だった西浦颯大。
中学、高校と輝かしい経歴を歩み、オリックスではあのイチロー以来、10代でホームランを記録するなど華々しい野球人生を歩んでいた。

そんな“野球に愛された男”に突然の病魔が襲い掛かる……
国の指定難病「特発性大腿骨頭壊死症」を患い、医師から告げられたのは「復帰は8割強、無理」という非情通告……
懸命にリハビリに励むも、復帰は叶わず、22歳の若さで球界を去ることに……

引退を決めた後輩に、山本由伸、宗佑磨がヒーローインタビューで投げ掛けた言葉とは? 
中嶋聡監督が取った意外な行動とは? そして西浦が引退試合で許された「たった1球の物語」とは――?

西浦颯大著『もう一回野球させてください神様』から、一部抜粋して公開します。

イエスマンだった後悔

 今となっては、コーチに言われたことよりも、自分の感覚を大事にしながらやればよかったなと感じています。

 だって、誰も僕の体で野球をしたことはないじゃないですか。

 だから、僕にしかわからないものがあるんじゃないかと思う。基本的なことは教えられても、細かいことになると、結局は自分にしかわからないので。

 プロに入ってからは、コーチにいろいろな指導を受けました。しかも、人によって言うことが違う場合もありました。

 僕はこう見えて〝イエスマン〞だったので、それを全部聞いて、全部取り入れようとしてしまった。そこは後悔していますね。もっと自分の考え、自分の感覚を大事にしてやればよかったな、と。

 僕は変に器用で、誰かの真似をしてみたらすぐにできるし、モノマネもすごく得意でした。ある程度ならコーチに言われた通りにすぐにできてしまうので、コロコロコロコロ、打ち方を変えてしまって、本当に自分にあった打ち方を見つけられずにいました。

 器用さは、長所に見えて、実は僕の短所だったんですよね。

 逆に、「自分はこの打ち方でしか打てない」というふうに、自分の打ち方を変えられない人は、一度ハマると、ずっとそのまま行けるんです。

 そう感じ始めてから、僕も自分の打ち方を探しました。それで、やっと見つかりそうだったんです。だけど、見つかる寸前に、病気になりました。

 3年目の11月3日、楽天戦で則本昂大さんから打ったヒットと、
11月4日に涌井秀章さん(現・中日)から放ったヒット。あの時はもう股関節がぶっ壊れていて、痛くてしかたがなかったんですけど、その中でも「あ、この打ち方いいな」となにかつかめたものがあったんです。

 でも、その11月4日の楽天戦が、僕にとって、一軍での最後の試合になりました。

異変

 異変を感じたのは、その数日前のことでした。特に激しいトレーニングもなにもしていないのに、急に左のお尻の周りに筋肉痛のような痛みを感じました。「なんだろう?」と思っていたら、だんだん左股関節あたりの骨が痛くなってきました。

 ちょうどその時、一軍に呼ばれました。11月3日のことでした。残り5試合になっていたので、その年の最後のチャンスだな、と。痛みを感じながらも、3日の試合に出て、ヒットも打ちました。でもその試合の後はもう歩けないレベルの痛さになっていました。

「頭が痛いんです」と噓をついて、痛み止めのロキソニンやボルタレンを大量に飲んだんですけど、全然効かない。そりゃあそうですよね。あの時にはもう股関節がつぶれていたんですから。

 それでも次の日も試合に出て、涌井さんからヒットを打ちました。でも痛みは限界に達していました。試合後、球場から帰る時にタクシーに乗ろうとしても、自力で足を上げられなくて、自分の手で持ち上げてやっと乗れたぐらいです。

 次の日もなんとか球場には行ったんですが、炎症が全身に広がっていたので、40度ぐらいの熱が出ていました。それでも練習に出ていたんですが、さすがにヘロヘロで、走り方がおかしいと、トレーナーさんにバレてしまった。

「お前、どうしたんや?」と聞かれたので、「股関節がめっちゃ痛いんです」と白状しました。

 すぐに大阪市内の病院に行き、レントゲンやCT、MRIなどの検査をした結果、「左大腿骨頸部疲労骨折」と診断されました。

 でも、そんなに急に疲労骨折になんてならないと思うので、なんか違うんじゃないかと感じました。セカンドオピニオンを受けようと思い、京都大学医学部附属病院に行きました。そこでは、別の診断名を告げられました。

「両側特発性大腿骨頭壊死症」

 お医者さんにそう言われて、頭の中にまず浮かんだのが「なにそれ?」でした。

「え? なんすかそれ?」ととりあえず聞き直しました。

「壊死」という言葉は聞いたことがありましたし、意味はなんとなくわかりました。

「あー、腐ってんのか」と(実際には腐っているわけではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態だったのですが)。

 最初に行った病院でも、骨が壊死しているというようなことは少し言われていました。

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