カーリング男子日本代表のSC軽井沢、PCCCで「一歩ずつ強くなった」 銅メダル獲得から見えたチーム力と個の成長

竹田聡一郎

左から栁澤李空、山口剛史、山本遵、小泉聡、臼井慎吾、ケロウナ出身のボブ・アーセルコーチ 【筆者撮影】

自信と意気込みを持って臨んだPCCC

「カナダに来てから少し時間がかかりましたが、この大会には(調整が)間に合ったと思う。個人的にも調子は悪くないので、リードからしっかりいい展開を作りたい」(リード・小泉聡)

「昨年は4連敗から始まって、個人的にはフィフスという悔しい経験もした。去年よりいい景色が見られるように挑みたい」(セカンド・山本遵)

「世界のトップ10と互角に戦うことが目標の今季、先週はグランドスラムという大舞台でチーム・クーイ(Kevin Koe/カナダ)に勝つことができた。チームとしては調子が上がってきているので、一歩一歩、今やるべきことがをしていい結果にしたい」(サード・山口剛史)

「強いチームを相手に勝つこともできたし、負ける試合も僅差のゲームができている。実力がついてきたと感じてる。大会ごとに調子が上がっていていいピーキングができた」(スキップ・栁澤李空)

 パンコンチネンタル選手権(PCCC)開幕前、JCA(日本カーリング協会)とカーリング日本代表のスポンサーであるJA全農が連携して開催した激励会での、日本代表SC軽井沢クラブのメンバーのコメントだ。

6勝1敗の2位で予選通過

 今季は9月からカナダに渡航したが「ここ2カ月で一番のご馳走。やっぱり和食です」とメンバーは大会前に、宮崎和牛のステーキをはじめ、西京焼き、焼き餃子などでエネルギーをチャージした 【筆者撮影】

 SC軽井沢クラブは今季序盤から、デリバリーのベースの部分を見直してきた。女子代表のロコ・ソラーレも同様の修錬を重ねている最中で、吉田知那美が「時に窮屈に感じるけれど、心地よく投げる感覚だけが良いのではなく、チーム全体として勝ちやすい状態へ持っていく」と大会前にコメントしていたが、選手がそれぞれ投げ方のクセを修正し合わせることでアイスリーディングのスピードを上げるといった、いくつかの狙いがある。

 その成果がラウンドロビンから出た。

 チャイニーズタイペイ、ガイアナ、オーストラリアと3連勝でスタートすると、優勝したカナダにこそ力負けしたが「チャンスは作れたので自信になった」と栁澤。続くニュージーランド、アメリカ、韓国という難敵からも3連勝。6勝1敗で2位で予選を通過した。

 特筆すべきはDSC(Draw Shot Challenge)の結果だ。

 カーリングでは試合前の練習の最後に、LSD(Last Stone Draw)を投げて中心に近いチームが有利な後攻でゲームを始められるルールがある。スタッツには15.5、105.8などと記されるが、これは中心からのcmでこの数字が小さいほどいい位置に石を運べたということになる。その数値の平均値がDSCであり、これは勝敗が並んだ際などに優劣をつけるために用いられる。

 先攻後攻のコイントスのような役目でありながら、大会を勝ち上がるために重要な要素であり、時にチームの強さを端的に表現する物差しとしても働く。今大会のラウンドロビン、日本代表のDSC男子が1位で、女子が2位。LSDは男子が6勝1敗で女子が7勝という成績だった。これは誇れる成果だ。このPCCCや日本選手権、世界選手権、そして五輪という大舞台では必ずと言っていいほどDSCが順位に関わってくる。これは今回の2チームだけでなく日本全体の強化策として、継続と改善をしていくべきだ。

 高い授業料になったが、これを糧にしたい

 しかし、準決勝の韓国戦で惜敗を喫す。1エンドから複数得点を記録するなど主導権を握りながらエンドを消化できていたが、8エンドに栁澤の決まったと思われたヒットロールがホグラインバイオレーションを取られ無効の判断をされると、このエンドで3点を献上し、結果的にはこれが致命傷になった。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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