ナブテスコ日本車いすカーリング選手権でチーム長野が優勝 16年ぶりのパラ出場へ前進

竹田聡一郎

終わってみれば6戦全勝(1試合は不戦勝)。その5戦すべてでビッグエンドを記録するなど高い決定力を見せたチーム長野 【筆者撮影】

高いアイスリーディング能力で戴冠

 5月19日から21日まで長野県の軽井沢アイスパークで、第19回ナブテスコ日本車いすカーリング選手権大会が行われた。

 決勝は全勝でラウンドロビン(総当たりの予選)を1位通過したチーム長野と、2位通過のKiT CURLING CLUB(以下KiT)と3位通過のease埼玉による準決勝を制したKiTとの対戦となった。

 前半はどちらかといえばKiTが主導権を握っていた。特にスキップの坂田谷隆のショットが冴え第3エンドと第4エンドと連続でスチールを記録。3点ビハインドでハーフを迎えたことについて、チーム長野のサードでスキップの和智浩は「ちょっと焦ったけれど」と苦笑いを浮かべつつも「粘り強く戦えるのがうちのカーリング。後半は(アイスが)重くなるから(アイス)コンディションをチームでしっかり共有できた」と振り返る。

 その言葉どおりチーム長野は後半戦、ドローショットを主体に仕掛けてゆく。車いすカーリングはスイープがないぶん、4人制よりもアイスは滑るように仕上げてあるのが一般的だ。後半に向けてその滑るアイスは徐々に重くなっていく傾向にあるが、重くなったことを確認してから仕掛けるというより「そろそろ重くなりそうだ」という鋭い予見とホームアイスの利が見事にハマった。リードの大﨑浩明が好セットアップを組むと、セカンドの斎藤あや子やサードの和智がその裏にカムアラウンドで強い石を作る。ハウス内の形が多少、悪くなってもフォースの飯島秀一の精緻なウェイトコントロールと勝負強さで複数得点の道をこじ開けた。

 第5エンドで2点を返し、第6エンドはスチールで2点を奪い逆転。第7エンドに3点を失って再びリードを許すが、迎えた最終第8エンド。セーフティーにゲームをクローズさせるべくアイスをクリーンに進めるKiTに対して、チーム長野は持ち時間も少ない中でもテイクゲームに付き合わずに最後までガードの裏にドローを投げ続けた。結果的にハウス内に自軍の赤石を並べ、5点というビッグエンドに仕上げた。大逆転勝利で2年ぶりの優勝を果たした。チームは日本代表として11月にフィンランド・ロホヤで開催される世界選手権Bに出場する。

「うちらしく楽しみながら、リザーブとコーチを含めたチーム一丸で頑張ってきます」と和智は力強く語った。

「うごかす、とめる」が得意なあの企業が大会史上初の冠スポンサーに

 車いすカーリングの日本選手権自体は2004年から開催されているが19回目となった今回、初めて冠スポンサーがついた。自動ドアや油圧機器など「モーションコントロール」という技術で国内外で高いシェアを誇るナブテスコ株式会社だ。「動かす、止める」がベースとなる技術はカーリングと共通している縁で、JCA(日本カーリング協会)、日本代表、日本選手権、そしてこの車いすカーリングと、多種目に渡るバックアップを実現してくれた。

 また、今大会は山口剛史、上野美優、上野結生(以上SC軽井沢クラブ)、鈴木みのり(中部電力)、鈴木結海(東京NB)、荻原諒(チーム荻原)ら軽井沢をホームリンクとする選手が、スムーズに試合を進行するためにストーンのクリーニングや投石者にセッティングをするIPA(アイスプレイヤーアシスタント)を担当していた。助け合い支え合うカーリング精神を体現するようなサポートであり、このあたりのカーリング界の一体感も、カーリング・ニッポンの特徴かもしれない。2010年バンクーバー大会以降は出場に至っていない、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォパラリンピックへの武器にしたいところだ。

 優勝したチーム長野は前述のようにロホヤで開催される世界選手権Bに出場し、そこで3位以内に入賞すれば、2024年3月に韓国・江陵で開催される世界選手権に駒を進めることになる。

 ミラノ・コルティナダンペッツォパラリンピックの出場権は、今年3月にカナダ・リッチモンドで開催された世界選手権(日本は2勝9敗で12位)、来年の江陵大会、そして2025年3月にミラノ・コルティナダンペッツォのパラリンピック会場で行われる予定の大会。この3つの世界選手権の結果に応じて振り分けられるポイントの合計で競われる。日本としてはまずはロホヤでの世界選手権Bを突破した上で好成績を残し、世界選手権の常連国にならないといけない。

 平坦な道のりではないが、劇的かつハイレベルな日本選手権の決勝、頼もしいスポンサーの理解、4人制との一体感などポジティブな材料は増えている。16年ぶりのパラ出場へ、いい風が吹いてきた。
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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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