ロコ・ソラーレが新ユニフォーム発表と共に今季始動 藤澤五月「結果を求めていいレベルになってきた」

竹田聡一郎

左から藤澤五月、吉田知那美、鈴木夕湖、吉田夕梨花、石崎琴美 【撮影:上野勇 (C)Loco Solare】

パンコンチネンタル連覇を目指すシーズン前半

 ロコ・ソラーレは7月14日、ホームリンクであるアドヴィックス常呂カーリングホール(北見市常呂町)で、セカンドチームのロコ・ステラ、今季からリスタートを切った男子チームのロコ・ドラーゴと共に「シーズンスタート記者会見」に参加し、選手それぞれが新シーズンに向けて抱負を語った。

 藤澤五月は今季について「オリンピックポイントがつく大事な大会も増えてくる」と位置付けし、「ピーキングであったり、世界のトップになるという部分で求められる部分が明確になってきた。それに向けて勝ちたい大会、ピーキングしたい大会をしっかり考えてやっていきたい」などとコメントしたが、シーズン初戦は8月24日に開幕するアドヴィックスカップを選んだ。これを終えるとカナダへ渡航。9月から10月末までグランドスラムを含む4大会をカナダで戦う。

 10月29日からは日本代表としてパンコンチネンタルカップ(カナダ・ケロウナ/以下PCCC)に挑む。これまではパシフィック・アジア選手権として開催されていた大会が昨年から、カナダやアメリカなどに拡大された新設大会で、世界選手権の予選の役割も果たす。日本代表のロコ・ソラーレは昨年は優勝。初代女王として連覇を狙う。

「今シーズンどんな練習をやっていくのか、心の準備とピーキングのバランス含めて、JD(ジェームス・ダグラス・リンド)コーチ、亮二さん(小野寺コーチ)と全員で話し合いながら、PCCCにどう臨んでいくか計画していく。大会自体がケロウナという私たちも大好きな街のひとつなので、そこでプレーできることが楽しみですし、男子代表(SC軽井沢クラブ)と一緒に戦えるのも楽しみにしています」(藤澤)

 シーズン中盤から後半にかけての詳しいスケジュールは未定だが、12月にサスカチュワンで開催されるグランドスラム「WFG MASTERS」が2023年の最終試合となりそうだ。クリスマスと年末を日本で過ごし、1月27日に開幕する日本選手権(札幌)3連覇に向け、調整に入る。

 日程的には年明けに海外遠征を敢行もできるが、1月16日-21日(現地時間)にレッドディアで行われるグランドスラムのひとつである、カナディアンオープンの出場は見送られることになりそうだ。強行は可能だがその場合、どんなに急いでも帰国は日本時間の23日以降。中3日で時差調整をしながら日本選手権を戦えないこともないが、今季の日本選手権は2026年のイタリア、ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の国内選考に絡んでいることも考慮しているのだろう。カナディアンオープンは昨年、グランドスラム初優勝を果たした縁起のいい大会だが、それをスキップするほど慎重なスケジューリングをしている印象だ。

2026年に向けての道のりと、多角的にカーリングを普及させるための取り組み

昨年11月のパンコンチネンタル選手権で初代王者に 【写真提供:日本カーリング協会】

 日本選手権が終わると約3週間のインターバルで、ミックスダブルス(以下MD)の日本選手権(軽井沢)が開催される。こちらも2026年五輪候補選手の選考に絡んでくる大会だが、昨年大会に出場していた藤澤、吉田知那美、吉田夕梨花らの参加は現時点では明言されていない。

 まずは4人制の日本選手権で勝ち、世界選手権に出場し、2026年イタリア行きに向けてアドバンテージを得ることの優先順位が高いのだろう。2026年五輪は、今季の2024年大会、来季の25年大会、2つの世界選手権の結果で日本代表としての出場権を競うことになり、その1大会目が来年3月中旬にカナダ・ノバスコシア州シドニーで行われる。そこに集中する構えだ。

 世界一への思いを問われた藤澤はこう答えた。

「これまでは『世界一』を口にする資格はあるのだろうか、と模索するシーズンでしたが、グランドスラムの優勝も世界ランキングの数字もそうですし、引き続き事前準備を大切にしながら、結果を求めていいレベルに達していると自分たちで感じ始めています。『ここで勝ちたい』という大会を明確にして、そこでしっかり結果を出せるように、すべき準備をして今シーズンを迎えたい」

 ロコ・ソラーレが五輪で連続でメダル獲得したことを筆頭に、2年連続で世界ジュニアで女子日本代表がファイナルに進出した快挙、松村千秋(中部電力)と谷田康真(北海道クボタ)の世界MD選手権準優勝など、日本のカーリングは広範囲かつ同時に強化の道のりを歩みつつある。引き続き多種目あるいは広いカテゴリーで分業しながら、それぞれが結果を出すのが理想だ。

 そういう意味では北京五輪前後は日本のカーリングの強化や普及の大部分を担っていたロコ・ソラーレだが、近年はある程度、チームの運営における新たな仕掛けや、カーリングの可能性を広げる活動をする余裕が出てきたように見える。

 このオフもアイス内外で新たな取り組みを見せた。5月には北見市観光協会と共同で「カーリングの街・北見市常呂町 カーリング聖地巡礼ツアー」を行い、その中でファンミーティングを実施し、ファンと交流をはかった。

 先月は沖縄県南風原町でのカーリング体験会「ロコ・ソラーレとエンジョイカーリング」に参加し、南の島にカーリングの種をまいた。

「日本の最北端(の都道府県)から来てこの最南端(同)でカーリングができて感慨深いです。この1回きりではなく毎年、沖縄でエンジョイカーリングが続くことによって、もしかしたら沖縄出身の日本代表、オリンピアンが生まれるかもしれない。すごく夢のある企画に参加させてもらった」とは吉田知のコメントだ。

 そして、カーリングではかねてポテンシャルが指摘されていた物販でも動きを見せた。冒頭の会見では新ユニフォームも発表されたが、そのレプリカTシャツをはじめ、タオルやロゴ入りオリジナルウエアなどをmizunoがオンラインショップで販売開始した。

「最近は(新型コロナウイルスの影響で)無観客での試合が続いていたのですが、それでも多くのファンが観戦できる試合や会える機会で、応援グッズとしてユニホームを着てくださったり、タオルを持って(広げて見せて)くれたりとか、それを見るだけで私たちを応援してくれているんだというのが一瞬で伝わります。今回もmizunoさんが素敵なユニフォームを作ってくれたので、それをたくさんのロコファンと共有できるのが今から楽しみです」

 今季の楽しみのひとつを語るのは吉田夕だ。プロ野球やJリーグのメジャースポーツように、カーリングでもファンのチームユニフォームやグッズを身につけて応援できる機会が増えれば、興行として、観戦スポーツとしての可能性を広げることにつながるだろう。

 キャリアとして円熟期を迎えつつもなお、挑戦に満ち溢れているロコ・ソラーレの新シーズン。今季はどんなゲームを見せてくれるだろうか。あるいはその王者のポジションを脅かすチームはどこだろうか。いよいよ幕が上がる。

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レプリカTシャツ、同じデザインのタオルなどを7月29日まで限定発売 【撮影:上野勇 (C)Loco Solare】

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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