天才司令塔・米須玲音は1年ぶり復帰ながらアシスト力は健在 ライバル河村勇輝の活躍に「悔しさ」あり?
米須玲音が1年ぶりにコートへ戻ってきた 【(C)Jbasket】
第72回大会は福岡第一に敗れてベスト4、第73回大会は仙台大明成に敗れて準優勝にとどまったものの、驚異的なアシスト力と華のあるプレーを見せていた。高3時の第73回大会は大会のベスト5にも選出されている。
高3のウインターカップ終了後、大学1年のシーズン終了後には川崎ブレイブサンダースの「特別指定選手」としてプロのコートも経験した。
しかし2022年は試練の1年だった。1月30日のレバンガ北海道戦で右肩関節脱臼を負い、まず大学2年春のトーナメントに出場できなかった。6月の新人戦は時間を抑えながらプレーしたが、夏に入って今度は右膝を傷め、1年以上も実戦から離れていた。
復帰直後ながら持ち味を発揮
9月20日の早稲田大戦は、米須の『らしさ』を強烈に感じた試合だった。第1クォーターの半ばからコートに入ると、チームのいい流れを維持させつつ、ボールムーブメントのテンポを明らかに上げていた。バックコートからフロントコート、サイドからサイドと長く強く正確なパスを刺すのが彼の持ち味だ。日大は相手の守備が整う前にボールを動かし、攻撃を先手先手で進めていた。
米須はこう振り返る。
「セカンドチームとしてはディフェンス(DF)からのブレイクを狙いにしていたんですけど、そこをなかなか出せずに前半を終えてしまいました。でも後半しっかり立て直して、何回かファストブレイクも出せて、いい形で20点差近く離せました」
後半は前半と違う米須の強みが出ていて、それはゴール下へのドライブだ。密集に潜り込んで相手を引き付け、ハンドオフ(手渡し)でフリーの味方を活かすような場面を何度も作っていた。
「(ヘッドコーチの)城間さんからも言われたんですけど、前半は中に切っていく選手がいませんでした。外で回しているからスリーだけを打たされて、なかなか点数に反映されていなかった。相手のカバーがそこまで来ていなかったし、後半はそういうところ(中に切れ込むプレー)をやっていました」
まだ「やりすぎ」は禁物
「自分のアシストも行けて、プラスみんなでDFするいい流れでした。やりすぎる部分……アシストを狙いすぎる、行きすぎる部分が出ました。今は少し抑えながら、ケガも予防しながらやっています。みんなが『落ち着け』『無理するところではない』と声をかけてくれました」
後半の米須はアシスト、ドライブと『イケイケ』の状態で、楽しそうにプレーしていた。ただ「やりすぎる」ことは再受傷のリスクを上げてしまう。幸いもう点差はかなり開いていた。彼の身を案じたチームメイトのアドバイスで、米須は再び『抑えた』プレーに戻った。
「最初の方はやはり(プレーに)怖さがあったんですけど、慣れ始めたらそんなに怖くなくて、今も普通にやっています。でも(思い切って動けるようになった)ここくらいからケガのリスクが高まってくると思うので、しっかり予防もしながらやっていきます」
日大は終盤こそ追い上げられたが91-78で早大に快勝。米須は20分50秒のプレータイムで4得点11アシストを記録した。大学はBリーグと違い「フリースローにつながったパス」にアシストがつかない。それも含めればアシストはあと3つか4つプラスされていたはずだ。
アシスト力の理由は?
「周りを見る部分は落ちていません。パスの出しどころ、パスの距離も全く問題ないです」
しかも米須のパスは予想できないタイミングで、予想できないコースに出てくる。
「高校の頃は最初チェストパスが多かったんですけど、それを止めろと言われました。DFが手を広げた中で、相手に当たってしまうからです。高校の先生から『肩の動きでDFはどっちにパスが出るかを見分けるので、その逆に出せばいい』と言われました」
米須はワンハンド(片手)のパスを多用するのだが、「肩、上半身は左に出す構えなのに、実際のパスは右に通す」ような場面が多い。目線の動きにも「味方を絶対に見ない。DFを見ながらやると、(相手が)どちらにパスするか分からなくなる」というこだわりがある。
彼の胸郭のしなやかな動きや、「眼力(めぢから)」がそんなフェイクを実現させている。ただでさえパスの質が高いのに、相手に「読ませない」ための工夫が詰まっている。それが判断力と並ぶ、驚異的なアシスト力の理由だ。