22歳の河村勇輝が直面したW杯の壁 ドイツ戦で語った悔しさと「ワクワク」

大島和人

河村は今大会屈指のPGシュルーダーとマッチアップした 【(C)FIBA】

 日本はドイツに本気で勝ちにいっていた。それは試合を観察していればよく伝わってきた。守備戦術一つとっても様々なバリエーションを用意し、相手を必死に混乱させようとしていた。攻撃も速いテンポで「打ち合い」を挑んでいた。しかし結果は63-81の完敗。8月25日に沖縄アリーナで開催されたFIBAバスケットボール・ワールドカップ初戦、日本のチャレンジは実らなかった。

 ドイツは直近の強化試合で、同じアジアの中国を107-58と圧倒している。しかもFIBAが25日発表したパワーランキング(優勝候補予想)第3弾は米国に次ぐ2位。デニス・シュルーダー(トロント・ラプターズ)、フランツ・バグナー(オーランドマジック)といったNBAのスターもいる。世界ランキング35位の日本にとって、無謀なチャレンジだったのかもしれない。

 ただ本気で立ち向かった、劣勢でも戦い続けた姿勢にはきっと意味がある。特に若手は「得る」ものもあったはずだ。日本は前半を33-53の大差で終えたが、後半に限れば32-28と盛り返している。日本がW杯で掲げる目標は「アジア勢最高成績とパリ五輪出場権獲得」だが、勝敗が並んだ場合は得失点差も絡む。ドイツに対して望んでいた結果は得られなかったが、次に向けてもがく意地は見せた。

「世界初経験」の若手は?

 トム・ホーバスヘッドコーチは試合後の記者会見で、チームの「姿勢」をこう称賛していた。

「エナジーがありすぎだった。そこは良かったと思う。後半の20分は最高だった。波が無くて、誰が入っても同じエナジーだった」

 日本の最多得点は渡邊雄太(フェニックス・サンズ)の20点で、それに次ぐのはNBA Dリーグのテキサス・レジェンズでプレーしていた馬場雄大の15点。国際経験はプレー、特にフィニッシュに差を生むポイントに見えた。

 一方で今回の日本代表は平均年齢が26.4歳と若く、2019年のW杯中国大会や、21年の東京オリンピックを経験していない主力も多い。そういった選手はまずこのレベルへの適応が必要になる。

 22歳の富永啓生はネブラスカ大でプレーする3ポイントシュートの名手だが、この試合は5得点と封じられた。ドイツは彼のシュートを最優先で消しにきていて、そもそも3ポイントシュートを2本しか打たせてもらえていない。

 河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)はチーム最年少のポイントガードだ。大学入学直前からBリーグの「特別指定選手」として経験を積み、2022-23シーズンからは東海大を中退してプロ入り。172センチの小兵ながらスキルとバスケIQは圧倒的で、新人王とMVPをダブル受賞する大活躍を見せた。とはいえ育成年代の大会を除くと「世界大会」は初の経験だった。

ターンオーバーが多く、3Pシュートも不発

 この試合の河村は18分12秒の出場で7得点3アシストを記録している。ベンチスタートだったが、富樫とほぼ試合を二分するプレータイムを得た。ただしターンオーバーは4つ喫している。3ポイントシュートも富永に比べるとオープンで打てる場面は多かったが、成功は「9分の2」にとどまった。他の選手と同様に苦しみ、壁に直面した試合だったことは間違いない。

 試合後の河村はこう口にしていた。

「ドイツはスタートダッシュがすごく良かったと思います。僕たちの時間帯もあった中で、簡単なターンオーバーが出たり(して流れが悪くなった)。こういった強豪国には自分たちのいい流れが来たとき、それを保ち続けるためには正確なプレーが必要になってくる。そういった精細さに欠けてしまった部分はあった」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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