天才司令塔・米須玲音は1年ぶり復帰ながらアシスト力は健在 ライバル河村勇輝の活躍に「悔しさ」あり?

大島和人

W杯を見て感じた「悔しい気持ち」

1学年上の河村勇輝(右)とは高校時代から何度も対戦している 【長田洋平/アフロスポーツ】

 日本代表がパリオリンピック出場を決めたFIBAバスケットボールワールドカップについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「寮のみんなと応援していて、日本が勝ったときは嬉しかったんですけど、どこかしらで悔しい気持ちもありました」

 河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)はPGとして日本代表を引っ張り、世界から注目される存在となった。米須は高1冬の2回戦、高2冬の準決勝で河村擁する福岡第一に敗れている。日大入学後も1年時に東海大と対戦している。1歳上で同じポジションの河村は否応なく意識する相手だ。

「高校、大学と河村さんと色々試合させてもらって、バチバチやって、メディアからも注目されました。でもそのあと自分がケガをして、差が開いてしまった感覚があります。自分がケガをしてなかったら……と考えると候補でも代表に入るとか、そういう経験を少しでもできたのかなと思います」

 トム・ホーバスヘッドコーチのバスケも、米須にフィットしそうなスタイルだった。それも悔しさの理由になっている。

「今の日本代表のバスケは速い攻めで、プラスDFが前から当たってブレイクを出すスタイルです。ブレイク、ボールプッシュはプレー的に合っているのかなと考えながら、どこかしらで喜べない部分もありました」

 きっと「やれる」という自負ゆえの悔しさだろう。

「追い越すことはかなり難しいと思うんですけど、でも追いつこうとすればするほど自分のプレーは良くなっていくと思います、それを目標としながら、これからもやっていきたい」

「ケガなくやり切った」先に

 膝の前十字靭帯損傷は「治る」怪我だが、完治には長い時間と配慮が必要だ。

「手術をしている分、左右差が出てきて、最初は(右足が)細すぎて何か自分の足じゃなかったです。(トレーニングも)地道なことだけで『本当に復帰できるのかな?』みたいな感じでした。肩もリハビリをしましたけど、足はそれこそ1年かかるので……。戻っていけるのかなという心配は結構ありました」

 そんなときに米須へメッセージを寄せたのが、同じ怪我を経験した大倉颯太(千葉ジェッツ)だった。

「上の人たちのおかげで自分も頑張ろうと思って、地道なトレーニングをやっていくしかないと切り替えました」

 米須は既に水準以上のプレーを見せているが、まだ「100%」の状態ではない。焦りは禁物で、まずケガなくプレーし続けることが大切だ。ただ11月末まで続くシーズンの中で、自然にレベルは上がっていくだろう。

「個人としてはインカレまでケガなくやり切ることが目標です。1年のときもインカレ(大学選手権)を経験して、準々決勝で筑波に負けて、その負けた試合は結構覚えています。自分としてはそれを超せる順位に行きたいし、プラス優勝したいです」

 我々の前に姿を現さない、試合から遠ざかる米須を心配したファンも多いはずだ。しかし彼は地道なリハビリを乗り越え、トップフォームを取り戻しつつある。コート上で既に魅力的なプレーを見せている。

 次のW杯カタール大会は、その頃24歳の米須も間違いなくチャレンジ可能だ。その広い視界にはきっと2027年とその先が入っているはずだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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