最強ペアとの距離縮める渡辺/東野 バドミントン世界選手権で初の金メダルなるか

平野貴也

ダイハツジャパンオープンで初優勝を飾った渡辺/東野 【撮影:平野貴也】

 決して好調とは思えない中での初優勝は、パリ五輪の金メダル筆頭候補との距離を縮めている証だ。バドミントン日本代表で混合ダブルスを戦う渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)は、7月30日に閉幕した国際大会「ダイハツジャパンオープン」で初優勝を飾った。

 2024年パリ五輪の出場権獲得を争う五輪レース中。世界トップの強豪が集う中、準決勝は、世界王者の鄭思維(ジェン・シーウェイ)/黄雅瓊(ファン・ヤチョン=中国)に2-0のストレート勝ち。決勝は、前回王者で世界ランク3位のデチャポル・プアバランクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)を2-1の逆転で制した。準決勝と決勝のカードは、準優勝だった前回と同じで、どちらも世界屈指の好カード。今回も決勝戦は苦しい試合だったが、常に声を掛け合ってスピードを落とさず、今度はタイトルをもぎ取った。

負傷続きの渡辺は、開幕前日にも足を痛めたが……

 渡辺/東野は、2021年の東京五輪で日本勢唯一となる銅メダルを獲得したペアだ。世界選手権では19年に銅メダル、21年と22年に銀メダルを獲得。大会開幕時点で世界ランク2位。十分な実績を誇る上位候補で、優勝は決してあり得ない結果ではなかった。

 ただし、コンディションを考えると、予想外だった。今年、渡辺は何度も足を痛めている。2月のアジア混合団体で負傷。3月の全英オープンは途中棄権で車いすで退場した。5月の男女混合国別対抗戦スディルマン杯も不調で決勝トーナメントは起用されなかった。

 それでも6月のシンガポールオープン、インドネシアオープンは連続して準優勝。回復具合が気になり、大会前に質問したが渡辺は「内緒です」の一言だった。スディルマン杯も調子は悪くなかったと主張した。渡辺のコンディションが戻っているならば……と思ったが、開幕前日の会場練習でも、足を痛めてトレーナーに診てもらう渡辺の姿があった。好調時でなければ、世界最強の中国ペアに勝つのは厳しいのではないかと思っていただけに、優勝には驚いた。そして、世界トップとの距離を確実に縮めていると感じた。

状況に応じた戦術選択に活路

中国ペアを破った準決勝は、渡辺が下がらずにプレー 【撮影:平野貴也】

 最大の難関だった準決勝は、普段と少し違う戦い方に見えた。普段、渡辺は後衛を左右に飛び跳ねるように動き、強打を打ち込んだり、同じ体勢から相手の意表を突いて相手コート手前に落としたりする場面が頻繁に見られる。しかし、今大会では、コートを広く動き回らず、前に残って点を取りに行くプレーが比較的多い印象を受けた。

 渡辺は、準決勝を勝利した際に次のように話した。

「こっちがどれだけ思い切って行くかだと思っていた。後ろの信頼があったので(前に出ることで触れなかった球は)カバーしてもらう気持ちで。思い切って(自分が)前に入ることで相手が後ろに逃げられなかったり、思い切り振って(うまくミートせずネットに引っ掛けるなど)ガシャってくれたり。あのペアに関して、今日に関して言えば、この戦い方で正解だったと思う。攻めの形を作り続けたくて、そうなった」

 今まで何度も完敗を喫して来た相手に対し、コンディションや調子の良さではなく、戦術選択と遂行力で勝てたことには、大きな価値がある。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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