元なでしこ永里亜紗乃が語るW杯の見どころ 「ファウルも厭わず選手の戦う姿が見たい」
なでしこジャパンのW杯初戦は7月22日 【Photo by Eric Verhoeven/Soccrates/Getty Images】
今大会から出場枠は24から32チームへと増え、決勝トーナメントへ進むためには1次リーグで上位2チームに入ることが絶対条件となる。11年ドイツ大会、15年カナダ大会では2大会連続で決勝に進むなど躍進したなでしこジャパンだが、16年にリオ五輪出場を逃して以降は低迷が続き、前回19年フランス大会は1次リーグを1勝1分け1敗で辛うじて通過するもベスト16敗退に終わった。
近年はヨーロッパでも女子サッカーが急速に発展し、勢力図も大きく変わりつつあるなか、なでしこジャパンはW杯にどう向かうべきか。元なでしこジャパンFWで15年カナダ大会の準優勝メンバーである解説者の永里亜紗乃さんに聞いた。
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メンバー選考の議論はもっとあっていい
「正直、最近の岩渕選手は所属クラブでも出場機会が限られ、代表でのパフォーマンスも好調とはいえない状況ではありました。ただ、これまでずっと起用されてきた選手ですし、池田太監督がどのような意図で外す決断をしたのかは気になります。W杯という大きな舞台では経験が必要な場面もあるはずですし、W杯を知っているという意味で岩渕選手の存在は決して小さくなかったと思うので、その穴をどう埋めていくのか。
また、ケガ明けの選手が何人か入っていますが、4年に1度の大会で限られた期間に数試合を戦う過密日程のなか、果たしてコンディションがピークかどうかわからない選手を選び、しっかり戦えるのかという心配はあります」
永里さんの指摘する通り、DF高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)は昨年11月に右膝を負傷し、6月10日のリーグ戦で復帰したばかり。FW千葉玲海菜(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)も昨年9月に右膝前十字じん帯を負傷し、5月に戦列に戻ったばかりで、試合勘を含めどこまで調子を戻しているかは気がかりだ。
そして、永里さんは今季のWEリーグでFWからDFにコンバートされながらもMVPに輝いた安藤梢(三菱重工浦和レッズレディース)についても触れた。11年ドイツ大会優勝、12年ロンドン五輪銀メダル、15年カナダ大会準優勝を知る安藤は7月に41歳になった大ベテランだが、自ら代表引退などを宣言しているわけではなく「サプライズ選出があってもよかったのでは」とした。
「MVPを獲ったということは、今季いちばん活躍した選手ということですよね。だとすれば、いちばん状態がいいわけですし、一般的に考えればイコール日本代表なんじゃないかなと。いきなり招集してもチームにフィットしないと考えているのであれば、事前の合宿から呼ぶ方法もあった。岩渕選手が外れた件もそうですが、たとえばこれが男子の日本代表であれば、もう少し大きな議論になっていたような気がします。そこは拍子抜けというか、『なんであの選手が選ばれた、選ばれなかった』のかということについてはもっと討論があってもいいんじゃないかということは強く思います」
23人中9人。海外組の増加は底上げのプラス材料
長谷川唯(写真奥)はマンチェスター・シティ所属 【Photo by Eric Verhoeven/Soccrates/Getty Images】
「そこは組織としての成長というよりは、個の成長なのかなとみています。東京五輪のあと海外に出る選手が増えて、個が成長したぶんの上積みがあったのは間違いない。ただ、3バックにした意図が攻守のどこにあったのか。邪推すると、4バックのときに左サイドバックを決めかねていたようにもみえたので、その解決策として3バックにしたようにもみえなくはありません。もちろん、逆にいうとW杯までの合宿でそのねらいをはっきりさせることができれば、掛け算的にチームが強くなる可能性もあると思っています」
MF長谷川唯(マンチェスター・シティ)、DF清水梨紗、MF林穂之香(ともにウェストハム)、MF長野風花(リバプール)はいずれも現在欧州で最もレベルの高いリーグの1つとされる英「FA女子スーパーリーグ」に所属する選手たち。そのほか、MF杉田妃和(ポートランド・ソーンズFC)とMF遠藤純(エンジェル・シティ)の2人はアメリカのNWSL、DF南萌華(ローマ)とFW浜野まいか(ハンマルビーIF/スウェーデン)もそれぞれ欧州でプレーする。今オフにドイツのバイエルンからイタリアのローマへの移籍を決めた熊谷紗希を除けば、そのほとんどの選手は東京五輪のあとに海を渡った選手たちであり、彼女たちがレギュラーの約半数。かつてドイツでのプレー経験もある永里さんは、海外組の増加はなでしこジャパンにとって1つのプラス材料だと指摘する。