羽生、三原、友野らが生歌に合わせたプログラムを披露 『ファンタジー・オン・アイス』で感じた“ライブ”の価値

沢田聡子

スケートで観客と対話する三原舞依

三原舞依『花』 伸びやかなスケーティングで『花』を表現した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 一流のスケーターとパフォーマー・アーティストが出演し、幻想的な照明やきらびやかな衣装で独自の世界を氷上に描き出すアイスショー、『ファンタジー・オン・アイス』。『ファンタジー・オン・アイス』ならではの見どころといえば、アーティストとスケーターのコラボレーションだろう。もとより音楽に対する感度が高いスケーターが、至近距離で歌うアーティストと共鳴する滑りを展開する。5月26日に千葉・幕張イベントホールで開幕した今年の公演でも、スケーター達が生歌に合わせた一期一会の演技を披露した。

 今季グランプリファイナル女王の三原舞依は、夏川りみの歌う『花』に合わせて可憐な滑りをみせた。白地にピンクや紫の花が描かれた衣装で、ゆったりとしたメロディに乗せて伸びやかなスケーティングを披露する。日頃積んでいる鍛錬がうかがわれるスパイラルやバレエジャンプ、ビールマンスピンは、フィギュアスケートならではの美しさを堪能させてくれるものだった。

 手の振付で歌詞の意味も伝えながら滑る三原は、味わい深い歌声と一体になり、スケーティングで観客に語りかけているようにみえた。『花』の歌詞が持つ深い意味を表現できるのは、23歳の三原が難病や体調不良など困難を乗り越えてきたからではないだろうか。

 三原は、今季世界選手権や国別対抗戦のエキシビションでは『Sakura』を滑り、日本の春の美しさを表現している。そして夏が近づくこの日に滑った『花』では、沖縄の明るい陽光を感じさせてくれた。

新境地を開拓した友野一希

友野一希『紡―TSUMUGI―』 メロウなナンバーで新たな魅力を見せた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 観客を楽しませる演技に定評のある友野一希も、DA PUMPの『紡―TSUMUGI―』に乗り、期待に応えるパフォーマンスを繰り広げる。ISSAの甘い歌声に合わせて滑らかなスケーティングを披露し、トリプルアクセルも組み込んで今季世界選手権で6位に入った技術力もみせた。

 今までの友野は速いテンポの曲でみせる軽快な滑りが印象的で、メロウなこのナンバーは新境地といえるかもしれない。友野のエンターテイナーとしての魅力が、ISSAの圧倒的な歌唱によってさらに引き出された印象を受けるプログラムだった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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