CCマリナーズと浦項がJクラブの命運を左右する? チームJリーグで挑むACLエリートの後半戦を語る

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前編に引き続き、水沼貴史氏(右)と野村明弘氏(左)がリーグステージ後半戦の注目ポイントを語った 【(c) J.LEAGUE】

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 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)って一体どうなってるの?

 そんな疑問を解消しながら、あらためて新ACLの大会方式や楽しみ方を理解すべく、ACL中継でもおなじみのコンビであり、世界のサッカーに精通する2人、サッカー解説者・指導者の水沼貴史氏とフリーアナウンサーの野村明弘氏に語り尽くしてもらった対談の後編。

 前編では今大会から大幅に変更された大会方式やこれまでのJリーグ勢の戦いぶり、リーグステージ突破に必要な勝点の予想について話してもらったが、後編ではこれから特に重要になるであろう対戦カードや見どころについて語ってもらった。

――リーグステージ突破ラインを水沼さんがおっしゃった11ポイントということにすると、ヴィッセル神戸はあと1ポイントなので引き分ければ大丈夫。川崎フロンターレは5ポイントなので年内で達するなら2勝が必要で、横浜F・マリノスは4ポイントなので1勝1分でOKです。特にどのカードが重要になりそうですか?

水沼 ホーム&アウェイの話じゃないけど、まずはホームで勝つ。相手がどこであろうとそれは関係ない。

野村 次のMD5で早速、横浜FMは浦項、神戸はセントラルコーストとのホームゲーム。神戸はここで決めちゃいましょうくらいの気持ちでいいかもしれませんね。

水沼 大事だよね。このホームゲームは。

野村 川崎FはMD6がホームで山東泰山と対戦します。今シーズンの神戸が強いのはメンバーを替えても安定していることが理由として挙げられると思いますが、川崎Fと横浜FMはゲームによっていいなと思うときと大量失点で「あれ?」っていうときがありますよね。

水沼 そういう中でピークがACLEに来るといい。横浜FMはこの間のブリーラム戦で相手に退場者が出たということもあるけど、うまく戦って勝って、その流れでリーグも勝った。川崎Fだよね。難しいよ、川崎Fは。サポーターにも選手たちにも鬼木(達)監督をいい形で送り出したいという気持ちもあると思う。戦い方は多少なりとも変えたりしているじゃないですか。4-3-3が鉄板だったのが4-2-3-1になり、最近は4-4-2に変えたり。前節の上海海港戦は選手たちを適材適所、「この選手はやっぱりここだよね」というところに置いてうまくいった。いい選手がいます、このポジションが困ったな、じゃあコンバートしてやってみよう、というのは監督としてはすごくありがたいことなんだけど、本来はここだよな、みたいな組み合わせが今の川崎Fにはジレンマのようにある。でも上海海港には勝利したし、その前のアウェイでの上海申花戦も序盤にマルシーニョが退場しちゃったし、最後にとどめを刺されてしまったけど、ずっと我慢しながら戦っていた。我慢することと自分たちのリズムになったときにギアを上げることができるクラブは強いと思います。

――我慢するからこそ自分たちのリズムになるときが来る、ということもありますよね。

水沼 でもサッカーって本当にわからない。状況によって変わってくるので。流れがあって、我慢していればチャンスは来るだろう、そのチャンスをモノにすれば自分たちのリズムになるけど、モノにできなかったら結局同じだし。でもピンチがあって、GKのセーブでバンバン防いでいて、それで流れが来るだろうと思ったら流れが来ない試合もあるし。王道的な流れはあるけど、全てがそうじゃないということも特にACLはあると思う。来たなと思った流れが1つのジャッジで変わったり。全てを受け入れながら戦わなければいけないんじゃないですか。

Jリーグとは異なるジャッジにうまく適応することも、ACLにおいては重要 【(C)2024 Asian Football Confederation (AFC)】

――そういう流れの変化は国内よりアジアの戦いの方が起きやすいのでしょうか?

水沼 スタジアムの雰囲気やレフェリーの判断でイレギュラーなことが起こりやすいということはあるでしょうね。

――逆にイレギュラーなことが起きにくいのがホームなので、ホームできっちり勝ちたい。

水沼 今、アウェイでどれくらいサポートされているのかわからないけど、少なくともホームではいつもどおりの準備ができる。いつもどおりの時間の過ごし方で試合に臨める。

――アジアの戦い、トーナメントはスタジアムの雰囲気も大切になりますよね。

野村 MD5で神戸、横浜FMは早速ホームの圧を高めていきたいですよね。

――国内とは勝手が違うアジアの大会は肌で何を感じ、それをどう生かしていくかが大切だと思いますが、横浜F・マリノスには水沼さんの御子息である宏太選手が在籍しています。宏太選手はFC東京、セレッソ大阪時代も含め、今大会が自身6度目の出場となります。今大会もここまで全4試合に出場してゴールも決めていますが、何か話されたりしていますか?

水沼 彼はACLが大好きです(笑)。行ったことがないところ、雰囲気が違うところでプレーするのが好きみたいで、そこにアジャストしないと勝てないわけじゃないですか。そういう術をユースの子たちにももっと感じてほしいと。ブリーラム戦でユース所属の選手が2人出て(望月耕平、浅田大翔)、それなりにやったけど熱量がいまいち出てこないと。それに不満を持って、直接言ったみたい。アジアはうまいだけじゃ勝てないですよ。そこのマインドは変えていかないと」

野村 またラッキーボーイみたいな選手も出てくるかもしれないですよね。

水沼 よく言うんですよね、ラッキーボーイが出てくるって。そんなに簡単じゃないよ。

野村 (笑)

ユース所属ながら、ブリーラム戦に出場した横浜FMの浅田大翔と望月耕平。各クラブの若手選手にも注目だ 【Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images】

水沼 ただ、なんで出てくるかというと、なかなかチャンスがない選手が試合に出て自信をつかむから。選手にとって自信ってすごく大きいですよ。やれるって思ったときの躍動感やチャレンジする姿勢というのはすごくて、ひるまずにいけるかどうか。それは大きいと思う。これはFWだけじゃない。DFでも『取れる!』と思って行く選手と『取れるかな?』って思っている選手は全然違うし、それがACLEのような大きな舞台で外国籍選手に対してガッと行って奪えた瞬間に自分の感覚をつかめる。そこからいいプレーがあって、監督がそれを見抜いて連続して使っていくと活躍していって、それがラッキーボーイになる。

野村 逆に迷いがあるとジャッジの問題もあるので、下手をすると退場につながっていったりする。

水沼 はりきりすぎてもマルシーニョみたいになっちゃう。あれも立ち上がりだし、『いくぞ』という雰囲気になっていたので、自分を失ってしまったような感じになった。だからメンタルも自分でコントロールできるようにならないと、いろいろなシチュエーションがイレギュラーで起こって来るのがACLなので、そこで環境やピッチのコンディションなどにアジャストできるようになって自信を深めていけるかというのが選手にとってはすごく大事だと思う。

――イレギュラーなことが起こりやすいことを想定すると、選手起用や采配についても国内の試合とは違いが出てくるものなのでしょうか?

野村 水沼さんからサッカーには流れがあるというお話もありましたが、ゲームの中でも外国籍選手を先に使うか、ベンチに置いておいて途中から流れを変えるかということもありますよね。控え選手の使い方というか、いろいろな選手が出てくる印象があります。

水沼 ACLはそうですよね。国内とは戦い方が少し変わってくるだろうし。川崎Fが対戦した上海海港も普段出ている選手が出ていなかったり、上海海港はリーグ優勝を決めて中2日で来て、お祝いムードの中で来日したということも(ケヴィン)マスカット監督はちょっと言っていた。日本も過密日程があるけど、外国だとそのクラブが置かれている状況が僕らはわからない。対戦するクラブの分析の人たちはわかっていると思うけど、我々はいまいちわからないところがある。

野村 川崎Fと上海海港のスタメンが配られたときに「あれっ?」ってなりましたもんね。

水沼 なった、なった。

野村 「あの選手いないな。あ、ベンチからか」とか。優勝して中2日だからターンオーバーなのか、レギュラーの人たちは騒ぎすぎちゃったのかな?とか。

水沼 オスカルは出てきたんだけど、出ていない選手が多かった。

――リーグ優勝の3日後ということもありますし、週末にカップ戦の決勝を控えていたということもあるんですよね。

野村 そういうめぐり合わせもありますよね。

水沼 それもめぐり合わせだよね。上海海港だからそうなったけど、他のクラブは違う。(相手がどういう状況のときに対戦するかという)タイミングはあるよね。

野村 日本勢もJリーグよりもベンチ入りメンバーが多いのでいろいろなやり方があって、先日の横浜FMもリードしていったら経験を積ませるようなユース年代の選手が出ましたけど、デビュー戦を見られるチャンスもACLは多いと思いますし、得られるものも多いですよね。アウェイでそれができるならすごい経験になると思います。さらにオスカルのような世界的なスーパースターがいるクラブもありますし、見る側としてはその選手を見るだけでも価値があると思います。

水沼 野村さんはチェルシー好きだから、オスカルがすごいときに移籍しちゃったもんだから、『どうした!?』みたいな(笑)。

野村 (笑)。でも今でもうまいんですよ。33歳ですけどうまいんです。上海海港には中国スーパーリーグでアシスト王がオスカルだったり、得点王のウー・レイに加えて得点ランク3位のグスタヴォがいる。各国の助っ人外国籍選手を見るのも面白いですよね。横浜FMの監督だったマスカット監督が中国にいて、日本で優勝争いをしていた川崎Fと対戦するというのもまたおもしろい。いろいろなドラマがありますよね。

――MD5では神戸はセントラルコースト、横浜FMは浦項とホームで対戦しますが、この2クラブはそれぞれ日本勢との3試合を残しています。神戸がセントラルコーストをしっかりと叩くことは他の日本勢にとっても重要ではないでしょうか?

水沼 セントラルコーストの勝点を伸ばさせないということは大事ですね。

野村 蔚山がホームで川崎Fに敗れ、その後に横浜FM、神戸にも敗れました。1つ目が大事ということを考えると、セントラルコーストに対しては神戸が勝つことが大事、浦項に対しては横浜FMが勝つことが大事ということですよね。

ACLエリートに出場するJクラブの対戦日程 【(c) J.LEAGUE】

水沼 日本全体のことを考えるとね。

野村 日本勢は強いなと思わせるということですよね。

――浦項はボーダーライン付近ということもありますし、セントラルコーストは下位にいるぶん、勢いには乗らせたくないですよね。

野村 下位の勝点が上がるのも困りますよね。

水沼 セントラルコーストは国内リーグが始まったばかりだからまだ勢いが出ていなくて、勝ったらシーズンスタートの勢いがついて、横浜FMや川崎Fが戦うときにはヤバいってなっている可能性もなきにしもあらず。でも神戸はやってくれるでしょう。チーム・ジャパン、チームJリーグですね。大相撲で同じ部屋の照ノ富士に優勝させるために熱海富士が頑張ります、翠富士が頑張ります、という感じだと思いますよ。

――ここでも大相撲ですね(笑)。ACLEの出場枠にも関わるAFCクラブコンペティションランキングのポイントをJリーグ勢として加算することもそうですし、今大会でも他のJクラブが上に行くためにもホームでは勝つ、対戦が残っているクラブに勝点を取らせないということも重要ですよね。

水沼 ACLの価値を上げることとJリーグの価値を上げること、それによってJリーグのクラブの価値を上げること、力を示すこと、いろいろなことがACLでは懸かっていて、だからこそこういうコンテンツが生まれるわけです。僕らにとっても重要なんですよ(笑)。

【(c) J.LEAGUE】

【(c) J.LEAGUE】

 出場クラブはもちろんのこと、日本のサッカー関係者にも重要だというACLの戦い。ACL2ではサンフレッチェ広島がすでにグループステージ突破を決めており、今季限りでの現役引退を決めているバンディエラ、青山敏弘が最後のホームゲームを戦う可能性もある。ACLEでは3クラブが揃ってリーグステージ突破を決められるのか。アジアの「つわものたち」とJリーグ勢の熱い戦いにぜひ注目してほしい。

(取材・構成:菊地正典)
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