北京五輪銅メダリスト、世界女王の坂本花織が感じていた重圧 乗り越えた今、取り戻した「自分らしいスケート」
コンビネーションジャンプでのミスは、挑戦した結果だった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
疲労があっても「曲が鳴ったらある程度はできる」
「きついなと思いながらも、曲が鳴ったらある程度はできるので。そこははっきり区別できているのかなと思うし、それが(シーズンの)最後にできるようになったので、それは良かったなと思っています」
さらりと口にする言葉に、世界女王の底力がのぞく。
「今シーズン、ショートとフリーの両方パーフェクトにそろえることがあまりできていないので、この最後の試合でしっかり両方そろえられたらなと思っています」
迎えたショート、ジャネット・ジャクソンの曲を使うダンサブルなプログラムを、坂本は大きなダブルアクセルで開始した。スピード感あふれるスケーティングで魅せていくが、後半の連続ジャンプでミスが出る。3回転フリップの着氷がやや危なくなったものの3回転トウループに挑み、転倒したのだ。氷上で背中を反らせる最後のポーズからなかなか立ち上がれない姿に、全力を尽くしたことがうかがえた。
「フリップで、多分回転不足で降りてきちゃって。体勢的には2(回転)でまとめた方がよかったのか、3(回転)に挑むかってすごく悩んだのですが、もう気持ちが3(回転)だったので、もう無理くりでもつけようと思って、つけたらこけました」
坂本はミックスゾーンでそう振り返り、「明日、とにかくやるしかないという気持ちになりました」と意気込んだ。
「しょうがないけど、『しょうがないで終わらせたくないなあ』というのが、ちょっとあります」
「明日は、本当にパーフェクトでできるようにしたいです」
前日に語っていた、疲労についての質問がとぶ。
――昨日『しんどい』という話でしたが、どこから力を引っ張り出して臨みましたか?
「お客さんや、チームシートにいるチームのみんなの応援のおかげで今日は力が出せたと思うので、すごく応援が力になったなと思いました」
3回目の出場となるこの国別対抗戦に、坂本はキャプテンとして臨んでいるが「そこまで『キャプテンだから』という気持ちもあまりなくて」と自然体だ。
「一人ひとりが頑張ろうという雰囲気で、みんなが最前線に立って戦ってくれているので。引っ張っていくというよりは『一緒に戦う』という気持ちで、今はいます」
ようやく声を出せるようになった観客、そして団体戦ならではのチームメイトの応援を背に受け、坂本は戦っていた。