北京五輪銅メダリスト、世界女王の坂本花織が感じていた重圧 乗り越えた今、取り戻した「自分らしいスケート」

沢田聡子

コンビネーションジャンプでのミスは、挑戦した結果だった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

疲労があっても「曲が鳴ったらある程度はできる」

 今季最後の試合となる世界国別対抗戦の開幕前日、公式練習後に取材に応じた坂本は、彼女らしい率直さで「体はしんどいです」と口にしている。連覇を果たした世界選手権から三週間後、しかもその間もアイスショーに出演し各地に赴いていることを考えれば、疲労がたまっていないはずがない。「寝ても寝ても、疲労回復できないレベルでしんどいです」と笑いながらも、坂本は付け加えた。

「きついなと思いながらも、曲が鳴ったらある程度はできるので。そこははっきり区別できているのかなと思うし、それが(シーズンの)最後にできるようになったので、それは良かったなと思っています」

 さらりと口にする言葉に、世界女王の底力がのぞく。

「今シーズン、ショートとフリーの両方パーフェクトにそろえることがあまりできていないので、この最後の試合でしっかり両方そろえられたらなと思っています」

 迎えたショート、ジャネット・ジャクソンの曲を使うダンサブルなプログラムを、坂本は大きなダブルアクセルで開始した。スピード感あふれるスケーティングで魅せていくが、後半の連続ジャンプでミスが出る。3回転フリップの着氷がやや危なくなったものの3回転トウループに挑み、転倒したのだ。氷上で背中を反らせる最後のポーズからなかなか立ち上がれない姿に、全力を尽くしたことがうかがえた。

「フリップで、多分回転不足で降りてきちゃって。体勢的には2(回転)でまとめた方がよかったのか、3(回転)に挑むかってすごく悩んだのですが、もう気持ちが3(回転)だったので、もう無理くりでもつけようと思って、つけたらこけました」

 坂本はミックスゾーンでそう振り返り、「明日、とにかくやるしかないという気持ちになりました」と意気込んだ。

「しょうがないけど、『しょうがないで終わらせたくないなあ』というのが、ちょっとあります」

「明日は、本当にパーフェクトでできるようにしたいです」

 前日に語っていた、疲労についての質問がとぶ。

――昨日『しんどい』という話でしたが、どこから力を引っ張り出して臨みましたか?

「お客さんや、チームシートにいるチームのみんなの応援のおかげで今日は力が出せたと思うので、すごく応援が力になったなと思いました」

 3回目の出場となるこの国別対抗戦に、坂本はキャプテンとして臨んでいるが「そこまで『キャプテンだから』という気持ちもあまりなくて」と自然体だ。

「一人ひとりが頑張ろうという雰囲気で、みんなが最前線に立って戦ってくれているので。引っ張っていくというよりは『一緒に戦う』という気持ちで、今はいます」

 ようやく声を出せるようになった観客、そして団体戦ならではのチームメイトの応援を背に受け、坂本は戦っていた。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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