全国4強から再出発の神村学園 FW西丸とMF名和田の連係が飛躍の鍵に

平野貴也

連係プレーで得たゴールを喜ぶ西丸(左)と名和田 【筆者撮影】

 注目世代が抜けた次のシーズン、さらなる躍進の期待と希望を抱きながら、神村学園サッカー部の面々は、新たな課題と向き合っている。1月に行われた全国高校選手権では、プロに進んだFW福田師王(ボルシアMG)やMF大迫塁(C大阪)を擁して鹿児島県勢として16年ぶりの4強進出を果たした。出場していた下級生も多く、新たなシーズンはさらに上を目指し得るだろう。しかし、2月21日まで沖縄県で開催された九州高校サッカー新人大会は、準優勝。主力が日本高校選抜で不在だった県大会決勝で敗れた鹿児島城西との再戦で、0-3の完敗を喫した。準決勝までは選手権で活躍したFW西丸道人(2年=4月から3年)やDF吉永夢希(2年)、MF名和田我空(1年)、MF金城蓮央(1年)ら能力の高い選手を中心に攻撃力を発揮していたが、最後の最後で県内のライバルに足下をすくわれた。

 神村学園の主将を務めるFW西丸は「最初の決定機を自分が外して、相手に流れが行ってしまった。自分自身、城西に負けたことは、ほとんどなかった。同じ県のライバルとして負けたら悔しいし、これで鹿児島の代表は城西と思われるのが悔しい。やっぱり、鹿児島と言えば神村というところを取り返していかないといけない」と悔しさを噛み締めた。

 昨冬の選手権予選となる県大会は6連覇を達成。神村学園は、強豪ひしめく鹿児島県の中心的存在となった。当然、ライバルに狙われる存在だ。16年ぶりの全国4強も相手の対抗心を刺激する。追われる立場の難しさを感じさせられた大会となった。

福田の13番を継いだFW西丸が背負う、主将としての苦悩

点取り屋の西丸は、主将としての働きにも四苦八苦 【筆者撮影】

 まだ、3年生が引退をして新チームが始動したばかり。現段階における勝った、負けたが1年後までそのままというわけではない。ここから選手個々とチームがどう進化していくかが問われる。特に最上級生の主力選手は、先輩に頼っていた部分を担う難しさと向き合わなければならない。

 FW西丸は、主将の重みを感じている。有村圭一郎監督によれば、選手権で敗れた翌日、次の主将は誰がやるのかと聞かれた西丸は、別の選手の名前を挙げたという。西丸は、その理由を「今年は(高卒でプロ入りを果たすための)勝負の年、自分に集中したい思いが強くて、主将はちょっと重いという気持ちでした」と明かした。2年生で出場した選手権の全国大会では、2得点を挙げるなど活躍。プロのスカウトの目に留まった。今季は、評価を上げてオファー獲得を狙うシーズン。福田が着けていた13番を継承し、ストライカーとしての仕事に集中したいと考えていた。しかし、有村監督や昨季の主将を務めた大迫と話す中で、悩みに悩んだ末に自分が引き受けることを決断した。「まだ自分のことで精いっぱいになっている」と話し、自分のプレーと、チーム全体、両方の進化に気を配る難しさを今は感じている。

 何しろ、プレー面でも昨季とはまったく違う動きにトライしている。昨季は福田とのツートップで、ターゲットとなる福田を見て動きを“受け身”で決めることができた。しかし、九州新人大会では西丸のワントップ。前線で相手の背後へ抜け出すか、後方の味方に近付いて縦パスのターゲットになるか、周りと合わせるのが難しい。「まだ動き方も分からない。師王さんに聞いたり、映像を見たりしている」と試行錯誤の段階だ。それでも、九州新人大会では、6試合で8得点を挙げて得点王の活躍を見せた。ゴールを決め、仲間に声をかけてチームをけん引していく、その挑戦は、まだ始まったばかりだ。

快足サイドバックの吉永は、中盤のプレーにトライ

左サイドバックの吉永は、中盤でのプレーにも挑戦している 【筆者撮影】

 同じように、昨季は左DFでスピードを生かしたオーバーラップと左足の強烈なキックを見せていたDF吉永も新しいプレーにトライしている。22年のU-16日本代表の一人。九州新人大会では、試合途中から左MFで起用されることが多かった。最終ラインからの攻撃参加は、中盤のお膳立てがあり、スピードを生かしやすい。しかし、中盤では相手のマークを受けながら、自力で突破していくプレーが多く求められる。今大会は、果敢にエンドライン際までえぐるパワフルな突破からクロスを上げる場面が多かったが、本人はまだ手応えを感じていない。「対策をされても個で打開できる力をつけないといけない。(最終ラインから)追い越す方が得意ですけど、1対1も勝てるようにならないと、上(のカテゴリー)では通用しない。ポジションを変わってもできるようにしたい。今回で1対1は苦手と分かったので、もっとやらないといけない」と勝敗に直結するゴール、アシストへのこだわりを示した。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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