高校サッカー、鹿児島の覇権争いが激化 鹿児島城西が神村学園を破って九州制覇

平野貴也

九州新人大会を制した鹿児島城西 【筆者撮影】

 高校サッカー界における、鹿児島県の覇権争いが激しさを増している。2月21日まで沖縄県で開催された九州高校サッカー新人大会で、鹿児島城西(鹿児島)が4年ぶり3度目の優勝を飾った。決勝戦は、神村学園との同県勢対決。セットプレーで先制するなど前半で3点をリード。後半は、徹底した守備で前年度全国4強の宿敵を寄せ付けず、6試合無失点を貫いて頂点に立った。勝った鹿児島城西は、準優勝だった2008年度の全国高校サッカー選手権で対戦相手に「大迫、半端ないって」と言わしめたFW大迫勇也(神戸)の母校。大迫を憧れの選手に挙げた屈強なFW岡留零樹(2年=4月から3年)は、大会初日に「神村は強いので、負けないように戦っていきたい」と話していた。1月には、神村学園が鹿児島県勢で16年ぶりに高校選手権で全国4強。ライバルの躍進で、対抗心に火がついた。

宿敵相手の2連勝にこだわった理由

九州頂上決戦は、鹿児島県決勝の再戦となった 【筆者撮影】

 高校サッカー界で最も注目度が高い全国高校選手権は、東京都を除いて各都道府県から1チームが出場する仕組みが定着。そのため、県内のライバル争いは激しい。鹿児島県では、昨年度で神村学園が6年連続で全国出場。16年ぶりの全国4強進出で頭一つ抜けた印象だ。

 しかし、そのイメージを、ライバルは破壊にかかる。岡留とツートップを組んだ快足FW矢吹凪琉(2年)は、大会2日目に「城西は、神村に負ける時期が続いていたけど、新人戦で自分たちが一つ取れた。どんどん勝って、もう一度、城西の流れを作っていきたい」と覇権奪還に意欲を示していた。九州大会の予選にあたる鹿児島県の新人大会決勝でも、神村学園を2-0で撃破した。ただし、当時は、神村学園の主力であるFW西丸道人(2年)、FW名和田岳(1年)、MF金城蓮央(1年)が日本高校選抜候補(U-17選抜含む)の合宿で不在。再戦で敗れれば、前回の勝利は相手の主力不在によるものと思われてしまう。相手に自信を回復させず、苦手意識を刷り込む、あるいは、直接対決における自信を手に入れる。そのために、新田監督は「神村に勝つことは大事」と県大会に続く2連勝にこだわり、逆に九州大会決勝では、鹿児島城西が主将のDF福岡想太朗(2年)やエースFW岡留を負傷で欠くことになったが、言い訳にするなと選手に言い含めていた。

対抗策を惜しまず披露

選手を鼓舞する鹿児島城西の新田監督 【筆者撮影】

 OBである新田監督が18年にコーチから昇格して以来、神村学園には敗戦続き。「10回目でようやく勝った」と話す表情には、重ねてきた苦労がにじんでいた。潜在的な部分も含めて苦手意識を払しょくするには、目に見える結果が最も効果的だ。九州大会の決勝では、温存していたマンツーマンの守備を採用。神村学園が得意とする、ポジションを入れ替わりながらパスをつなぐ攻撃を封じ込めた。シーズン序盤に繰り出すつもりはなかったようだが、新田監督は「やれるうちに全部、策を打ってみようと思いました。やれば、また総体(夏のインターハイ)のときには、神村さんも策を打ってくるでしょう。そこではがされたら、今度は(自分たちがさらなる策を冬の)選手権で、となるかもしれません」と出し惜しみをせず、切磋琢磨を求めた。決勝前日、神村学園の有村圭一郎監督も、鹿児島城西について「いつでもすごく頑張ってくるチーム。だから、こっちも上手くなっていける」と挑戦を歓迎していた。九州の頂上決戦は、良いライバル関係が垣間見れる場だった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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