コロナ禍から蘇った高校サッカー選手権 制限を受け続けた世代が最後に味わえた「本当に幸せな空間」

平野貴也
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入学時からコロナ禍に悩まされた世代が、大観衆の前で躍動。接戦の末、岡山学芸館の初優勝で幕を閉じた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 コロナ禍でも夢を諦めずに努力を続けた世代が、5万人超の大観衆の前で躍動した。第101回全国高校サッカー選手権は9日に国立競技場で決勝戦を行い、岡山学芸館(岡山)が3-1で東山(京都)を破って初優勝を飾った。ピッチでインタビューを受けた高原良明監督は「苦しいコロナ禍での状況が続きましたが、ピッチに立っているメンバー、サブのメンバー、スタンドで応援してくれているメンバー、本当に135人全員でチーム一丸となって日本一が取れたので本当にうれしく思います」と喜び、快挙を成し遂げた部員を称えた。

大会は4分の1がPK決着の大混戦、岡山県勢の優勝は初

 全47試合のうち、4分の1にあたる12試合がPK決着。戦前から予想された通りの大混戦だった。岡山学芸館も3回戦と準決勝のPK戦をかいくぐった。過去の最高成績は、ベスト16。全国レベルの強豪とは言い難い実績ではあったが、勝ち上がる中で自信を深めた。大会前、漫才コンテストのテレビ番組「M-1グランプリ」で岡山県出身コンビのウエストランドが優勝した際には、選手同士で「なんか、岡山(に良い風が)来てるな」と言い合っていたというが、高原監督が「一戦一戦、成長した」と話した通り、勝ち上がる毎に追い風を受けるように、強くたくましいチームに変ぼうした。

 準決勝では、プロ内定選手2人を擁した神村学園(鹿児島)と打ち合っても3-3とひけを取らなかった。主将を務めたDF井上斗嵩(3年)は「注目選手を倒してやろうという気持ちは強かった。小粒の集団ですけど、群がって群がって、全員で止めようと意識していた」と挑戦者の姿勢を持ち続けてきたことを明かした。試合終了の笛が鳴ると、達成感と安堵感からピッチに崩れ落ち、多くの選手が大の字になり、空を見上げた。追い続けた夢がかない、電光掲示板に「岡山学芸館、優勝」と表示された文字を見ても実感が沸かなかったという井上は、地元の岡山市出身。「岡山の歴史を変えることができて、みんなを誇りに思いたい。自分たちの試合を見た地元の人たちに、元気や感動が伝えられていたら嬉しい。岡山がもっとサッカーが強い県になってくれたらいい」とも話した。
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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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