全国4強から再出発の神村学園 FW西丸とMF名和田の連係が飛躍の鍵に

平野貴也

得点が欲しい名和田と西丸 「チームを勝たせる」選択ができるか?

ゴールを奪う名和田。下級生とは思えない存在感を示した 【筆者撮影】

 一方、伸び伸びと力を発揮している下級生もいた。大迫の14番を継いだMF名和田だ。まだ1年生だが、実力は一つ上の学年に混ざっても引けを取らない。高卒の段階でプロへ行くこと、福田のように海外へ挑戦することも視野に入れているアタッカーは、九州新人大会で6得点。中盤の選手だが、主将の西丸に次ぐゴール数を記録した。準々決勝では、プレッシングでボールを奪うやいなや、弾丸ミドルを一振りで突き刺すなど別格の存在感。今季の神村学園の攻撃は、西丸と名和田が中心となるが、興味深いのは、この2人のパス交換が「極端に回数が少ない」(有村監督)状況にあることだ。互いに自分がゴールを奪ってチームを勝たせる気持ちが強いのだろう。決勝トーナメント1回戦では、名和田がPKのキッカーに名乗り出たが、西丸も自分がキッカーだと主張。互いに譲らずに長引き、審判に注意を受け、結果的にジャンケンで勝った名和田が蹴って決める場面があったという。

 2人の関係を涼しい顔で見守っていた有村監督は、準々決勝の後、2人のパス交換が増えれば得点は増えると話していたが、準決勝でその形が表れた。序盤から日章学園(宮崎)にシュートを打たれ続ける難しいゲーム。スコアレスで進んだ後半、名和田は中盤で前を向き、ドリブルからミドルシュートを狙うかと思われた場面で、対角へのミドルパスを選択した。鋭い抜け出しで相手を振り切ったFW西丸がハーフボレー気味に左足で合わせて決勝点を奪い、駆け寄った名和田と抱き合って喜んだ。名和田は、準々決勝まで全試合で得点。アシストについて聞くと「今年は得点を量産したいと思っているので(無得点は)悔しかったけど、決定的な仕事が求められている。アシストで貢献できて良かった」と自身を納得させるような言い方で話した。

 名和田のラストパスから西丸がゴール。2人のパス交換は、今季初挑戦となるプレミアリーグWESTなどを通して磨きがかかるだろう。有村監督は「勝つためには、当然あの選択が必要。(パスの)回数が互いに増えてくれば、点は取れると思うが、お互いに出さない(笑)。拮抗したゲームでは、勝つための選択をしないと、どちらも評価されないよと言っている。でも、いくら言ったって、自分で感じて選択しないと。(必要性を)感じ取るのを待っているのは、面倒くさいんですけど」と苦笑いだった。

 チームとして鹿児島県で追われる立場になった難しさはあるが、目標は、昨季以上の飛躍。福田や大迫の背中を追う次世代が、個々の能力、連係を磨き、新たなシーズンを駆け抜ける。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント