連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康「春季キャンプはシーズンのスタートではない」 選手時代に重要視した取り組みとは?

工藤公康

選手時代の工藤氏は、どんな考えを持ってキャンプに臨んでいたのだろうか? 【写真は共同】

 現役通算224勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、2022年からは野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム。春季キャンプたけなわのプロ野球ですが、工藤氏は選手時代、どんな意識を持ってキャンプのトレーニングに取り組んでいたのでしょうか? 第8回目は、1980年代の西武黄金時代の頃まで振り返りながら、春季キャンプの目的について考えます。

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シーズンが終わった瞬間に来季が始まる

 そもそもプロ野球の春季キャンプには、どんな目的があるのでしょうか?

 「野球におけるお正月」とも呼ばれる春季キャンプ。確かに「シーズンのスタート」という印象が読者のみなさんも強いのではないでしょうか。

 しかし、最初にお伝えしておきます。春季キャンプを「スタート」という位置付けで取り組んでいる選手はほとんどいないと思っています。チーム全体での活動という意味では、「スタート」なのかもしれませんが、選手個人や監督が「スタートは春季キャンプから!」と考えているようでは、とてもではありませんがシーズンに間に合いません。

 私が監督の時には、「シーズンが終わった瞬間が次のシーズンのスタート」と考えていました。厳密に言えば、シーズンの終盤には、すでに来季を見据えています。春季キャンプというのは、あくまで確認作業です。その上で修正をしたり、開幕までの2ヶ月弱でどのように仕上げていくのか計画を立て、準備とシミュレーションありきでキャンプを行っていきます。今回は選手時代のキャンプを振り返っていきますので、監督時代のキャンプの話は次回以降に深掘りしたいと思います。

オフの自主トレに励む現役時代の工藤氏(1993年) 【写真は共同】

 では、私が選手の頃、キャンプをどう考えていたのでしょうか?

 選手時代は、秋季キャンプ、もしくはシーズンを終えて1週間から10日後、がスタートだと考えていました。秋季キャンプは、主に若い選手が練習やトレーニングに取り組む印象があるかもしれませんが、主力選手も、ジョギングやストレッチを組み合わせ、シーズンの疲労などをとりつつ、来シーズンの土台を築いていくのです。私自身も若い頃からそう考えていたわけではありませんが、春季キャンプ・来シーズンに向けた準備を、11月~1月に取り組んでいました。オフシーズンの取り組みが、キャンプの中身に大きく影響を与えます。どれだけ体力を養い、キャンプまでに貯金を作ることができたか。選手時代は、そこも重要視して取り組んできました。

 技術練習やチームでの基本的な連携プレーなどの練習を繰り返し反復するためには、体力が必要になります。疲労から回復する能力や、疲れにくい身体があるからこそ、ケガのリスクを抑えて練習を反復することができます。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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