連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が投手目線で解説 村上宗隆&吉田正尚の凄さと「好打者の攻略3カ条」

工藤公康

村上宗隆のような好打者をいかに抑えるか。工藤氏が現役時代に実践していたその投球術とは? 【写真は共同】

 現役通算224勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、2022 年からは野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム。第5回は、工藤公康さんが昨年のセ・パ両リーグを代表するスラッガー、村上宗隆選手(東京ヤクルト)、吉田正尚選手(レッドソックス)の凄さについて投手目線から解説。彼らのような好打者をいかに抑えるか、現役時代に工藤さんが実践していた投球術や駆け引きを紹介しながら考えます。

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投手目線から見た村上宗隆、吉田正尚の凄さ

 村上宗隆選手は、投手から背番号が見えるほど肩を入れた構えが大きな特徴です。細かい打撃技術の話は分かりませんが、これほど肩を入れて構えてはインコースをさばくのは難しいだろうと考え、投手はインコースを攻めたくなります。こういった構えの場合、外の変化球などに腕が届きやすくなる分、インコースは窮屈なバッティングになりやすいでしょう。あえて始動を早くしたり、よほど意識をしないと詰まってしまいます。

 それでも村上選手はそのインコースをきれいにさばき、ライトスタンドにボールを運ぶことができます。しかもアウトコースは広角に打ち分けることができます。ファウルになるなら全然問題ないのですが、フェアゾーンへ、しかもスタンドまで運ばれては投手として太刀打ちできなくなります。

 振りの速さや、配球の読み、相手投手のデータの分析など、考えられる要因はいくつもありますが、単純にこれほどの成績をおさめるということは、並大抵の努力ではありません。本当に凄いという一言に尽きます。

吉田正尚のバットコントロールはもちろん選球眼の良さも工藤氏は絶賛する 【写真は共同】

 パ・リーグの打者では、今年からボストン・レッドソックスに移籍した元オリックスの吉田正尚選手も非常にインコースをさばくのがうまい打者です。コースに応じて、インコースならしっかりと前でさばき、アウトコースなら自分のポイントに引きつけてスイングをしている印象です。

 吉田選手の凄さは、バットコントロールはもちろんですが、三振の少なさと選球眼の良さ(三振率8.1%・四球率15.7%は、ともにパ・リーグの規定打席到達者の中でトップ)にもあります。低めの見極めや、タイミングをずらされてもボールにうまくコンタクトできる技術は本当に素晴らしい。相手がシフトを敷いたとしても、外角の球を反対方向に打ち返し、ヒットにできる技術もあります。パワフルなスイングとクレバーな一面を兼ね備えた打者だと思います。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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