工藤公康「春季キャンプはシーズンのスタートではない」 選手時代に重要視した取り組みとは?
キャンプでの反復練習がシーズンでの危機を救う
西武の黄金期を築いた広岡監督時代のキャンプでは、投内連携など基本練習が徹底して繰り返されたという 【写真は共同】
当時の広岡達朗監督は、ファーストベースカバーの際に、「ファーストベースを見ずにベースを踏めるように」と言っていました。最初は「そんなことできるわけない」と思っていたことでも、不思議なことに、数をこなしていくごとに、足を出す位置がベースに近づいていくのです。最終的には、足を出したところにポンとベースがあり、「ベースを見なくてもファーストのベースカバーができる」ようになりました。この経験が、シーズン中の危機を何度も救ってくれるのです。
キャンプというのは、何も、チームとして確認作業をするだけではありません。西武時代のキャンプでは、こういった基本の大切さを中心に、練習のための練習ではなく、試合で勝つための練習をチーム全体で取り組んできました。当然個人としての練習や取り組みもしっかりと行わなければなりません。チームとしてミスをどれだけ抑えることができるのか、綻びが生まれないために、どれだけ基本的なことを積んでいけるのか、という部分もキャンプでは大切な取り組みだと思っています。
だからこそ、そういった練習を数多くこなしていくために、春季キャンプまでにどれだけ準備ができていたかが、大切になるのです。
今取り組んでいることは必ず将来に活きる
当時は気付くこともなく、“なんでこんなことを…”と思っていたこともあります。それでも、時が経って振り返った時に、私の現役を支えてくれたことの一つだったと感じました。
春季キャンプでは、技術的な練習も多く、練習やトレーニングも負荷の高いものを行っているチームもあるかと思います。取り組んでいる選手も大変な時期かもしれませんが、今の取り組みは必ず自分自身の未来につながります。一見、遠回りなこと、非効率的だと思われるようなことでも、シーズン中の大ピンチでその経験が活き、自分を助けてくれることもあります。今シーズンでなくても、2年後や3年後につながってくることもあります。ぜひ、未来を見据えて、この春季キャンプに取り組んでもらえたらと思います。
考え方や思い一つで、今シーズンの結果も変わってきます。ポジティブな思考とマインドで、開幕に向けて最高の準備をしてほしいと思っています。
(企画構成:スリーライト)