勝つためにどのようにオーダーを決めるのか? 監督・工藤公康が考えた現場でのデータ活用法
ソフトバンク監督時代、工藤氏はチームを勝たせるために、データをどのように活用していたのだろうか? 【写真は共同】
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データやデバイスによってますます進化する野球界
各球団のキャンプでは様々なデータ解析機器などを駆使し、技術の上達に役立てている 【写真は共同】
「セイバーメトリクス」と呼ばれるようなデータサイエンスをはじめ、球場には「トラックマン」と呼ばれるボールを追跡する装置が設置され、近年では「ホークアイ」と呼ばれる映像分析のカメラも導入する球団も増えてきました。
今年、各地で行われた自主トレでも、「ラプソード」と呼ばれる投球したボールを解析する装置を使用するなど、自分たちでデータを測定してトレーニングを行う選手も増えてきました。投球したボールの回転数や軸、弾道測定、守備時の選手の動きの追跡など、多くの情報を、より簡易的に数値や指標として得られるようになりつつあります。
選手にとっても、指導者にとっても、このようなデータ指標というのは、大変貴重なものであり、活用の仕方次第でパフォーマンスの向上や、ケガの予防、コンディショニングにも役立てることができます。
しかし、データを活用していく際には、注意しなければならないことも出てきます。単純に数値やデータだけを見ても、技術や戦術、選手のパフォーマンスに結びつけることはなかなか難しいかと思います。大切なのは、“活用の仕方”です。データや科学を活用すれば、何かしらプラスの影響があると思うかもしれませんが、場合によってはマイナスに働いてしまう可能性があるということも私たちは理解しておく必要があると思います。
データはあくまでも「過去の結果」でしかない
攻撃は「打線」と呼ばれるように、線で考える必要があると私は思います。いかに線として考えるか、打順を回すことができるかを考えて、コーチ陣と話し合い、打順を考えていました。選手個々の四球率、直近の成績や状態、相手投手との対戦成績も含めて、「つなぎの部分に誰を入れるのか?」「どういった状況が起こり得るのか?」考えられるシチュエーションを何度もシミュレーションをして、「線」を考えていきます。
少しデータの話とは逸れてしまいますが、打順やメンバーを考える時に、私が大切にしていたことがあります。
それは、試合前のバッティング練習の“打球音”を聞くことです。状態の良い選手というのは、木製のバットで打っているにも関わらず、金属のような非常に高く、乾いた音をしています。逆にあまり状態の良くない選手は、潰れたような低い音になりがちです。打球や打球方向なども見ますが、私自身はそういった打球音も聞いて選手の状態を確認していました。
データを活用する際に、注意しなければいけないことは、データはあくまで過去の結果であり、今の状態をそのまま表しているわけではないということです。
これまでの成績や結果の集約がデータとして蓄積されているので、確かに傾向や癖のようなものは分かるかもしれません。しかし、選手はその時のコンディションによって大きく変わります。心理的な要因やちょっとしたきっかけひとつで変わる選手もいます。今の選手の状態をしっかりと把握をした上で、データという要素も含めて考える。そのために、その時その時の選手の動きをしっかりと見ることが大切だと思っています。