連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

勝つためにどのようにオーダーを決めるのか? 監督・工藤公康が考えた現場でのデータ活用法

工藤公康

数値化されない部分に多くのヒントがある

工藤氏がソフトバンク監督時代に考えていたデータとの向き合い方とは? 【写真は共同】

 前回の配球の話にも通ずるかもしれませんが、数値化されない部分にも多くのヒントが隠されています。動き出しやタイミングの取り方の違い、その時のコンディションをはじめとした様々な要因が絡み合って、結果は生まれます。

 先ほど書いたような、その日のバッティング練習の状態はもちろんのこと、ウォーミングアップの動きや、ダッシュの動き、細かい部分までしっかりと見ることで、分かる部分もたくさん出てきます。

 データを活用する前提として、選手をしっかりと見ること。数値だけで評価してしまうことで、選手の日々の成長も、わずかな変化も見ようとしなくなってしまうことも考えられます。毎日しっかりと見ることで、選手へのデータの還元方法や、「どうすればこのデータが活きるのか」ということを、より深めていくことができると思っています。

 何よりも大事なのは選手(人)です。データだけに頼れば起用法を見誤ったり、チャンスを逃してしまうことも少なくありません。データは非常に強力な武器になりますが、過信しすぎないことが大切です。選手のすべてを教えてくれるわけではないということを常に頭に入れておく必要があると私は思います。

 データや科学というのは非常に奥が深いものです。今回、書き切ることができなかった部分を、次回にさらに深掘りさせていただければと思っています。

(企画構成:スリーライト)

2/2ページ

著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント