連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が考える「良いリリーフ投手」の条件 データで表せない「気持ちの強さ」とは?

工藤公康

横浜時代にはリリーフとしても活躍した工藤氏。自身の経験を交え、「良いリリーフ投手と は?」について解説する 【写真は共同】

 現役通算224 勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、2022 年からは野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム。第4回は、中継ぎ・抑え投手の重要性がますます高まっている現代のプロ野球において、どんな投手が「良いリリーフ投手」になのかを考えます。自身の経験を交えて、リリーフ投手に欠かせない「気持ちの強さ」についても、工藤さんならではの視点で考察しました。

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ますます高まっているリリーフ投手の重要性

昨シーズンのパ・リーグ最優秀中継ぎ投手賞は、同じ西武の平良海馬と水上由伸がホールド ポイント「35」で分け合った 【写真は共同】

 昨シーズンのパ・リーグでは、リリーフ陣の防御率が改善されたチームが上位を占める結果になりました。

オリックス 2.96(3.33)
ソフトバンク 2.72(3.09)
西武 2.31(3.59)
楽天 3.09(2.75)
ロッテ 3.46(3.24)
日本ハム 3.83(3.14)
※()は 2021年シーズンの数字

 先発が試合を作ることができるかという点も、勝利、優勝のために必要な要素のひとつですが、分業制が進んだ今、5〜6回を投げた先発投手と同等、もしくはそれ以上に「相手を抑える可能性が高い投手が後ろに控えているか?」が非常に大切なファクターになっています。

 リリーフ投手は様々なシチュエーションでの登板が予想されます。少ない点差、ピンチの場面、ワンポイントなど、状況に応じて登板し、その時に求められている結果を残すために登板します。

 先発投手とは違い、リリーフ投手はその日のバッターと1打席勝負になります。相手の状態やその試合の状況なども考える必要がありますが、投球という点で考えれば、相手打者を抑えるための球威や決め球を持っているかが重要になります。

良いリリーフ投手の条件とは?

DeNA の山崎康晃のように、ボールの質以外にもクイックやフィールディングも良いリリ ーフ投手の条件になる 【写真は共同】

 リリーフ投手の適正として、三振が取れる決め球をしっかりとコントロールできるか、カウント球も含めたストレートの球威、そのコンビネーションで相手打者を打ち取れるかどうかを軸に考えます。

 いろいろな考え方はあるかと思いますが、私は、「9回裏2死満塁カウント3ボール2ストライクで投球できるボールが、自分自身の持っている球種だ」と先輩から教わりました。その中で決め球を選択し、勝負をする。楽天の松井裕樹投手のスライダーや、ソフトバンクの藤井皓哉投手のフォーク、モイネロ投手のカーブ、チェンジアップ、巨人の大勢投手のフォークなど、昨季活躍したリリーフ投手は、決め球にもなる球威のある真っ直ぐと、勝負ができる変化球をコントロールできていた印象があります。

 プラスしてリリーフ投手というのは、攻撃側からすれば、ほとんどのケースは1イニングで攻略をしなければいけません(ロングリリーフを除く)。そうなった際に、攻略の糸口が掴めない投手というのも、リリーフ投手としては素晴らしい能力です。攻略の糸口というのは、単に打たれない・四球率が低いという点以外にも様々な要素があります。例えばランナーを出しても、クイックが速い投手やフィールディングの上手い選手は、その先の失点に結びつきにくいケースがあります。DeNA の山崎康晃投手や西武の平良海馬投手はクイックが速く、盗塁されにくいなどの特徴があります。

 フィールディングが上手い投手であれば、バントをしたい場面で相手にプレッシャーを与えることができます。投球以外の部分でも、攻略の糸口を与えない投手かどうか注目しても面白いのかもしれません。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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