広島を十年ぶりのJ1制覇に導けるか? 2試合連続ゴール、新人FW中村草太が示す可能性
特に明るい兆候は、明治大から加わったルーキー中村草太の存在感だ。彼は2月8日のFUJIFILM SUPER CUP2025で公式戦デビューを飾ると、12日(木)のAFCチャンピオンズリーグ2・ナムディン戦、16日(日)の開幕・FC町田ゼルビア戦と連続ゴールを決めている。チームの「スーパーサブ」として後半途中から起用されていて、J1デビュー戦となった町田戦は77分に決勝ゴールを挙げた。
「逆転勝利」から見える広島の変化
昨年9月の対戦で町田から2アシストを決めた右ワイドの中野就斗を消され、「幅」を封じられて攻撃が単調になっていた。しかし後半開始とともに左ワイドに菅を起用し、1-1の72分から左シャドーに投入された中村がさらに攻勢を加速させた。
今季の広島は新加入選手が選択肢を増やし、後半に展開を活性化させられている。ミヒャエル・スキッベ監督は言う。
「昨シーズンと違って、交代によって少し違う形のサッカーを展開できるようになりました。個人の特徴を生かした別のサッカーが展開できる強みが生まれました。後半に追い風を吹かせるようになったことは、この冬の補強がうまくいった部分だと思います」
中村のようなスペースを走り回れるタイプが、後半からピッチに入ると効果的だ。菅は2人の連携こう説明していた。
「自分がサポートをしながら、好きなようにやらせるのがベストだと思います。『スペースに出して』というようなことを、試合に入ってきたときは必ず言ってくるので、(中村が一人でスペースから仕掛けられるように)あまり近づかないようにしています」
昨季の広島はリーグ戦で19勝を挙げているが、ビハインドをひっくり返した展開が一度もなかった。それが今季は開幕戦から逆転勝利を実現している。
センターバック(CB)の荒木隼人は言う。
「途中から出てくる選手が結果を出すことで、本当にチームの勢いが出ます。なかなかなかった逆転勝利を今シーズンの一発目に出せたのは、チームがより良い方向に向かっている証拠かなと思います」
新戦力が起こした後半の反攻
これにより持ち味を発揮し始めたのがジャーメインだ。
77分の決勝点は彼のプレスから生まれた。相手CBの「つなぎ」にミスが生まれ、ボール奪取と横パスからジャーメインがミドルを放つ。中村がGKの弾いたこぼれ球に素早く動き出し、ゴール左からフリーで叩き込んだ。
スキッベ監督はジャーメインの働きをこう評価する。
「今までいたドグ(ドウグラス・ヴィエイラ)、ピエロス(・ソティリウ)に比べてさらにダイナミックなプレーができるところに期待しています。前からのプレスも、今までの選手よりできます」
荒木はこう振り返る。
「ドレシェヴィッチ選手が入ってきて、(町田が)ボールをちょっと保持し始めたところに対して、ジャーメイン選手がしっかりプレスをかけてくれて助かりました。僕らも守備に行きやすかった」
ジャーメインが前から「圧」をかけ、なおかつボールを収める回数が増えたことで、広島はチーム全体がより前に出ていける状態になっていた。シュートは前半の3本から7本、コーナーキックは2本から5本に増えている。そんな攻勢が2得点に結びついた。
中村の決勝ゴールもジャーメインのプレスと、仕掛けから生まれたものだった。