パリ五輪の金狙うバドミントン「シダマツ」ペア 2週連続の悔し涙、そこから得たものとは?

平野貴也

日本の次期エースとして期待が高まる「シダマツ」ペアだが、日本開催の2大会は悔しい結果に終わった 【筆者撮影】

 新エースの看板を背負う大会にするはずだった。それなのに……。緊張とプレッシャーで自分たちの長所を発揮できないまま、日本での見せ場が終わってしまった。2024年パリ五輪の金メダルを目標に掲げるバドミントン女子ダブルスの志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)は、8月22日に東京で開幕した世界選手権、翌週に大阪で行われたダイハツヨネックスジャパンオープンという、日本で行われた国際大会で2週連続して悔し涙を流した。

「パリの優勝候補、日本のエース」に名乗りを上げたかった世界選手権

 特に、世界選手権は、2人にとって大きな位置付けの大会だっただけに、失意は大きかった。東京五輪でともにベスト8だった福島由紀/廣田彩花(丸杉)、松本麻佑/永原和可那(北都銀行)は、五輪後にそれぞれ廣田、永原が負傷し戦線を離脱している。

 当時、日本の3番手ペアだった志田/松山は、その間に台頭してきた。昨年終盤は、シーズン成績上位選手が集うBWFワールドツアーファイナルズで準優勝。今季も3月に格式高い全英オープンを含めてハイレベルな国際大会で3度優勝。24年パリ五輪に向けた、この種目の日本の新たなエースとして期待を高めた。自国開催でプレッシャーもかかる世界選手権は、2人にとって、パリの優勝候補、日本のエースに名乗りを上げる舞台にしたい大会だった。

 シミュレーションは、十分のはず。東京五輪の直前合宿で先輩たちのスパーリングパートナーを務めた。緊張感との戦いに苦しむ姿を見て、重圧との向き合い方も準備してきたつもりだ。ところが、勝てばメダルが確定する世界選手権の準々決勝では、2人のスピード感あふれる攻撃ラリーが見られなかった。東京五輪の銅メダルペアである金昭映/孔熙容(キム・ソヨン/コン・ヒヨン=韓国)に大きなラリーで振り回されて主導権を握れず、ストレートで敗戦。

 志田は「相手は(レシーブで)私たちを回して点数を取って来たんですけど、私たちはディフェンスですぐに決められたり、簡単なミスだったりが、すごい多かった。一つひとつの基礎やディフェンス力をもっと高めていかないといけない」と振り返る。互いに決めきることが難しい環境において、守備面で対抗し切れなかったことを課題に挙げていた。

2週目のジャパンオープンは、まさかの初戦敗退

 2週目のジャパンオープン初戦の敗戦は、世界選手権でメダルを逃したショックを引きずったように見えた。コート脇の撮影エリアで写真を撮りながら確認した2人の表情は、明らかに困惑していた。負けん気の強い松山は俯(うつむ)いていて、元気がない。笑顔で松山を励ましてリードするはずの志田も、頼るようにコーチ席にばかり視線を送っていた。どちらがどちらを助けることもできず、ペアとして試合の流れを引き寄せられなかった。

 相手は、世界ランク10位の金ヘジョン/鄭ナウン(韓国)。4勝1敗と分は良かったが、勝負どころでアグレッシブな姿勢が見られず、0-2(21-23、19-21)で競り負けた。松山は「相手に何かをされたというよりは、自分たちが最後まで乗り切れず、何もできずという試合。こういう負け方は一番よくない」と肩を落とした。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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