バドミントン男子・21歳の奈良岡が急浮上 桃田に代わる新エースへ名乗りを上げる

平野貴也

世界トップクラスに急激に近づいている奈良岡功大。写真は9月ジャパンオープン 【Getty Images】

 パリ五輪の出場権争いを前に、予測を超える勢いで世代交代の波がやって来た。12月11日まで行われていたバドミントンの国際大会「BWFワールドツアーファイナルズ」に出場した男子シングルスの奈良岡功大(IMG)は、準決勝に進出。決勝進出はならなかったが、世界王者ビクター・アクセルセン(デンマーク)を相手に1-2(23-21、19-21、18-21)と大接戦を展開してポテンシャルの高さを証明した。15日に帰国した奈良岡は「準優勝でやる前までは『敵わない選手』というか、1ゲーム取れたらいいなと思う選手でしたけど、今回ここまで競ることができたので、次にやるときは、勝ちに行くというか。今までも勝ちに行っていましたけど、もっと意識的にやっていきたいと思います」と、王者アクセルセンとの距離を縮めた手応えを語った。

 大会直前にはBWF(世界バドミントン連盟)による年間表彰で、将来性を評価するMost Promising Player賞を受賞した。日本の男子選手では、2012年の桃田賢斗(NTT東日本)以来10年ぶりで2人目。シングルス種目で過去に受賞した11人のうち、不正試合で処分を受けた1人を除く10人は、五輪または世界選手権のメダリストとなっている賞で、世界のトップクラスに躍進していくであろう人材として、世界から注目される存在となった証だ。12月20日更新の世界ランクでは、桃田を抜いて同種目日本最上位となった。2024年パリ五輪の出場権獲得レースが始まる来年を前に、期待株が急浮上してきた。

6月に日本A代表入り、ネット前の技術は世界王者にも通用

 奈良岡は、今季後半に急激に成績を挙げた。6月に国内大会の日本ランキングサーキットを優勝するまでは日本B代表。ランキングポイントの高い国際大会に派遣されなかった。ポイントの低い国際大会は、コロナ禍からの再開が遅れたことや、日本バドミントン協会が代表チームの派遣以外の国際大会への自費参加を禁止していたために参加できず、思うように国際舞台の経験を積むことができなかった。それでも数少ない国際大会で着実にポイントを獲得。A代表昇格以降は、10月にデンマークオープン、フランスオープンとポイントの高い大会で連続してベスト4入りを果たし、ランキングを急上昇させた。

 BWFワールドツアーファイナルズは、年間を通して世界各地で行われるワールドツアーの年間成績上位選手しか出場できない。奈良岡は今季後半の目覚ましい成績でツアーランク5位に食い込んで出場権を獲得した。ランキング上位選手のみの厳しいグループリーグを2位で通過。準決勝では、グループリーグで敗れたばかりの王者アクセルセンと再戦。得意とするネット前のショットの精度で相手を上回ってフロントコートを支配。上から打ち下ろすショットには角度をつけ、ネットインを連発した。1ゲームを先取し、第2ゲームも終盤の19-18でリード。一気に攻め切ろうとスピードアップしたところをしのがれると、さすがに王者の強さに付いていくのが精いっぱいとなったが、最後まで食らいついてみせた。

 奈良岡は「風(の特徴)がつかみにくい体育館で、最初(の対戦で)はガンガンやられちゃいましたけど、2回目は風の感覚もつかめていましたし、一度対戦している分、どこに打って来るかもある程度分かっていたので、だから競れたのかなと思います。自分の得意なショットで、アクセルセン選手を苦しめることができたし(点を)決めることもできたので、良かったです」と試合を振り返った。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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