「自分はファイター」島田高志郎が柔らかな表現の奥に秘めた闘志 15歳で渡ったスイスでの鍛錬が実った全日本選手権

沢田聡子

ジュニアグランプリファイナルでは、銅メダルを獲った経験のある島田。全日本選手権で、成長した姿を見せた 【写真:坂本清】

とらわれていたジュニア時代の戦績

「自分はファイターだぞ」

 ショートで2位につけて臨む全日本選手権のフリー、リンクに向かう島田高志郎は、自らにそう言い聞かせていた。滑るのは、昨季から継続するチャップリンの『City Lights』だ。

 島田は、ジュニアからの推薦枠で出場した2015年の全日本でもチャップリンをテーマにしたフリーを滑っている。当時から繊細で柔らかい表現が際立っていた島田だが、大きく変わったのは身長だ。今は177cmとフィギュアスケーターの中では目立つほどの長身で、手足が長くモデルのような容姿を持つ。14歳だった可愛らしいジュニアスケーターは、哀愁も表現できる21歳に成長した。

 島田は「長身であるということは武器にもなりますし、逆に言えば例えば手足が曲がっていたら目立ってしまう」と分析している。

「その長所と短所、両方あると思うのですが、『長い手足を生かしたらさらに良くなるよ』と、いろいろな振付師の方から言われ続けてきたので。まだまだステファン(・ランビエール)コーチやチームメイトのデニス(・ヴァシリエフス)くんには遠く及ばないですけど、自分なりのスタイルを持ってさらに今後どんどんスケートを突き詰めていきたいなと思います」

 島田が単身スイスに渡りステファンコーチのチームに加わったのは、2017年夏、15歳の時だ。愛媛県出身の島田は6歳からスケートを始め、スケートのために小学4年生の時に母親と岡山市に移住している。2013年には全日本ノービス選手権(ノービスA)で優勝、ジュニアに上がってからも全日本ジュニアで2015年は4位、2016年は2位に入り、2年連続でジュニアの推薦枠を勝ち取り全日本に出場した(2015年11位、2016年7位)。

 2017年春、岡山で師事していたコーチが滋賀に拠点を移したことを機に、島田はスイスに行く決断をする。それ以来、島田は憧れのスケーターだったランビエールコーチの指導を受け、スケートを磨いてきた。

 島田は、2018年ジュニアグランプリファイナルに出場、銅メダルを獲得している。ジュニアで結果を残した島田は翌季からシニアに上がるが、そこからは目立った成果を挙げられない年月が続いた。島田は「ジュニア最後の年は自分の中でも一番印象に残っているシーズンで、そこの過去の自分にとらわれていた部分も結構あったりしました」と振り返っている。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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