磨き上げた滑りを見せた坂本花織と三原舞依、大技に挑んだ島田麻央 それぞれの輝きを放った全日本選手権

沢田聡子

島田が感じた「2本挑戦した中で3位をとれた」喜び

表彰台に立ったのは坂本(中央)、三原(左)、島田(右)の3人だった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ向かう4年間の幕開けとなる今季、全日本選手権の表彰台に立ったのは22歳の坂本花織、23歳の三原舞依、14歳の島田麻央だった。

 ショートではトリプルアクセルに挑まず4位発進となった島田は、フリーでトリプルアクセルと4回転トウループに挑んだ。どちらも転倒したものの、記者会見では満足感も漂わせている。

 島田は、ノービス時代にも飛び級で出場した2020年全日本ジュニア選手権で銅メダルを獲得している。当時と今の感じ方の比較を記者会見で求められた島田は「ジュニアと全日本の両方3位になったことは、まさかとれると思っていなかったので、両方びっくりの3位」とし、言葉を継いだ。

「ジュニアで3位とった時と全日本でとった時では、ジュニアの時はジャンプが何も挑戦できなかったのですが、今回は(トリプルアクセルと4回転の)2本挑戦した中で3位をとれたので、ジュニアの時より今回の方が、嬉しさが大きかったです」

 あどけない口調とは裏腹に、何よりも難しいジャンプに挑むことに喜びを感じている島田の姿勢がにじむ答えだった。今季からシニアの試合に出場できる年齢が段階的に引き上げられるため、島田は2026年の五輪には出場できなくなった。しかしモチベーションが高難度ジャンプへの挑戦にある限り、島田の成長は止まらないだろう。

 今季多くの試合に出場してきた三原は、12月11日まで行われていたグランプリファイナル(イタリア・トリノ)で初優勝を果たしている。価値ある金メダルを獲得したとはいえ疲労は蓄積しているはずで、今までの人生を振り返って滑るショート『戦場のメリークリスマス』では、時折足が重そうな風情を漂わせながらも2位につけている。

 ショートとは雰囲気がまったく異なる情熱的なフリー『恋は魔術師』では、後ろに3回転トウループをつける予定だった3回転ルッツが単発になった。しかし後半で跳んだ3回転ルッツに3回転トウループをつけ、最後に単発で跳ぶ予定だった3回転ループに2回転トウループと2回転ループをつける三原の粘りに、今までの険しかった道程を知る観客が湧く。今年最後の試合で力を振り絞った三原は、価値ある銀メダルを獲得した。

ファイナル後に充実した練習を積んだ坂本

世界女王の坂本は、GPファイナルではミスの出たフリー演技で実力を示した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 北京五輪銅メダリストでもある現世界女王・坂本は、グランプリファイナルではショートで首位につけたもののフリーで失速、総合5位に終わっている。しかしファイナルから短い期間しかなかったにもかかわらず、しっかりと立て直して底力をみせた。

「今大会はファイナルから一週間しか経っていないのですが、ファイナルの後すごくいい切り替えができて、その後今シーズンの中で一番充実した練習ができた」

 自分を追い込む練習で本来の強さを取り戻した坂本は、ショートではジャネット・ジャクソンの曲を使うダンサブルな表現を見せ、ミスを3回転ルッツのエッジエラーのみに抑えて首位に立った。

 ファイナルでは崩れたフリーは真価を問われる演技となったが、坂本はこの大一番で真価を発揮する。最終滑走者としてリンクに入った坂本は、いつものように大きなダブルアクセルで演技を開始。順調にジャンプを決めていくが、朝の公式練習ではジャンプのミスが続いた演技後半がポイントになるかと思われた。

 しかし、やはり坂本は本番に強かった。後半に入って、3回転フリップ+3回転トウループ、ダブルアクセル+3回転トウループ+2回転トウループを成功させる。最後のジャンプとなる3回転ループも、会場中が息を詰めて見守る中で決めてみせた。柔らかく曲線的な振り付けに挑戦した『Elastic Heart』の深い味わいを、観る者すべてに伝える好演技だった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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