グランプリファイナル（イタリア・トリノ）のキスアンドクライで、フリーを滑り終えた木原龍一は涙ぐんでいた。

「今日は僕自身8年ぶりぐらいに（ソロジャンプの3回転）サルコウでミスをしてしまって、『僕のせいでいい点数を出せないんじゃないか』っていう申し訳ない気持ちになってしまって。点数が出る前はものすごくその悔しさを感じてしまって、不安な気持ちが大きかったですね」

　フリーでも1位になりペア優勝が決まると、木原はさらに泣き崩れる。木原同様、サイドバイサイドの3連続ジャンプとスロージャンプでの自らの失敗を悔いていた三浦璃来も、大きな目に涙をにじませた。日本のペアとして初めてファイナルの金メダルを獲得したキスアンドクライで、いつも笑顔の“りくりゅう”が見せた涙からは、彼らが越えてきた困難がうかがえる。

　今季を前にした7月下旬、アイスショーで三浦が転倒し、左肩を脱臼。日本でのリハビリを終えた三浦が練習拠点のカナダに戻り、二人での練習を再開できたのは9月上旬だったという。しかし怪我で出遅れたシーズンにもかかわらず、グランプリシリーズ初戦のスケートカナダ、2戦目のNHK杯で連勝。昨季世界選手権銀メダリストの実力を示し、グランプリファイナルに進出した。

　 NHK杯の記者会見でファイナルに向けての気持ちを問われた木原は、日本人同士のペアとして初出場するはずだった昨季のファイナルの中止について言及している。

「グランプリファイナルは昨年も進出を決めていたんですけれども、（新型コロナウイルスの）オミクロン株の影響でなくなってしまって、ものすごく残念だったので。今回また二人で、チームで出場できることになったので、本当に嬉しく思います」

　2年分の思いを持って臨んだファイナル、「君は一人ではない」と歌う『You’ll Never Walk Alone』に合わせて滑るショートプログラムを、二人はいつもの笑顔で大きなミスなく滑り切った。昨季の世界選手権優勝カップル、アレクサ・クニエリム/ブランドン・フレイジャー（アメリカ）を0.43上回り、僅差での首位発進となる。