野村克也から学びレベルアップした茶野篤政 NPBスカウトへ猛アピール直後、チームに大激震
【写真は共同】
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自分自身に言い聞かせた言葉
「試合に出続けて、今度は評価されないといけない世界だったので。ただヒットを打ったらいい、盗塁決めたらいいとかじゃなくて。盗塁の中でもいい盗塁とか、もっといいヒットを打たないと、なかなか評価してもらえない。そこもキツい部分はありました」
一概に「いいヒット」と言っても、求められるものはたくさんある。早いカウントから打ち損じることなく、自分のスイングで速く強い打球を飛ばす。そしてそれを量産しなければならない。
「四国アイランドリーグのピッチャーはレベルが高いと思ってたんですけど、それでもやっぱり『独立リーグレベルのピッチャーだから』っていう見られ方をするとずっと言われてたので。『そういうピッチャーから、当たり前に強い打球を打てるようにしないと、なかなか評価されないよ』と。(橋本)球史さんとか松澤さん(裕介コーチ/元・巨人育成)にもよく言われてたので」
常に自分自身に言い聞かせていた。
「積極的に行こう」
だが、なかなか結果につながらなかった前期と、結果の出始めた後期とでは、積極さの種類が変わってきている。焦って積極的に行くのではなく、自分のやりたいことをちゃんとやるために積極的に行けるようになった。以前よりも、余裕を持って積極性を出せるようになった。打撃も、盗塁も―。
「最初のころは、もうとにかく積極的に行かなあかん! と思って難しい球に手を出したりとか、タイミング合ってないのに手を出したりとかだったのが、後期になるとある程度、捉えるポイントもつかめてきたと思うので。狙って狙って、その捉えたいポイントで行ける。あ、ムリやと思ったら行かないっていうのが、自分のなかでできるようになってきたと思います」
後期に入り、茶野のバットは好調だった。7月を打率.330(2位)で終えると、40試合を経過した8月7日、打率を.349にまで上げ、ついにリーグトップに立つ。盗塁数も26(1位)と二冠の位置にいた。井上が9本塁打、26打点と、やはり二冠の位置におり、打撃タイトル4部門で徳島の2人がトップを走っている。
好調の要因を尋ねると、キャンプからやってきたことがようやくでき始めたのだという。
「前足(右足)の膝の使い方ですね。あと肩を開かないようにと、ずーっと取り組んでやってたのが、やっと後期が始まったぐらいからでき始めたかなあって感じです」
ミートするため右足を踏み出したとき、膝を伸ばして突っ張るクセがあった。それを伸ばさずに、体重を乗せて打ちたい。膝が伸びると、どうしてもバットの軌道が下から出てしまう。そのため引っかけたり、打ち上げたりしていた。しっかり右膝に体重を乗せることで、バットの軌道が下から出なくなる。すると強い打球が打てる。
「全体的に、自分のなかでレベルがすごく上がってるなあって感じましたし、なんとか食らいついていけてるかなって」
大学時代から打撃が自分の持ち味だと思ってやってきたが、四国リーグに来てそれが通用するかどうかは自信がなかった。いや、通用しないだろうと思って徳島に来ていた。
自身の成長に手応えをつかんだのは、ソフトバンク3軍と対戦した定期交流戦5回戦(7月30日、JAアグリあなんスタジアム)だった。左腕、大城真乃から2本の三塁打を含む3安打を放っている。
「春に筑後に行ったときは『全然、通用しないな!』って感じで。まったくなんにもできずに帰ってきたので。それが2カ月ぐらい経ったホームのソフトバンク戦で、打てなかったピッチャーからヒットが出て。そういうところでもちょっとずつ変わってきたなあっていう感じはありました」
もしかしたら、自分もやれるんじゃないか―?
そんなふうに思い始めていた。
特にレベルが上がったと感じているのが盗塁のテクニックだ。これまでなら、なんとなくリードを取って、なんとなくスタートを切り、盗塁が決まったらいいなあと、ただ漠然に思っていたものがより具体的になった。
まず、リードする位置をしっかり決める。そこまで常に出られるための練習をして、走路も二塁ベースまで真っすぐ走れるよう練習していた。スライディングも足からではなく、ヘッドスライディングに変えた。飛び込める分、足を合わせる動作がなくなり、ロスが少ないと考えた。橋本コーチとともに、これまで以上に到達タイムにこだわって練習するようになった。