“かなだい”が感じた、トップチームの気迫 3回目のNHK杯で得た自信と課題

沢田聡子

体力の消耗と戦いながらも『オペラ座の怪人』を演じ切る

上位チームの闘志を感じながら、かなだいはオペラ座の世界を日本のファンに披露した 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 村元哉中/高橋大輔が体感したのは、世界上位のアイスダンスチームが美しさの中に秘めた闘志だった。

 NHK杯(札幌・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ)のアイスダンス・リズムダンスで、村元/高橋は速い動きの練度を上げた滑りを見せ、5位につけている。フリーは後半グループで滑ることになった二人は、当日朝の公式練習から他のカップルの気迫を感じていた。

「朝の公式練習からみんなぶつかりそうになることが多くて、昨日(のリズムダンス)とはまた打って変わって違う雰囲気の公式練習と、5分間練習でした。5分間練習も結構バチバチで」(高橋)

「本当みんなもう、アグレッシブにやっている感じはしたので、勉強になりました」(村元)

 ただ、二人はその雰囲気にのまれていたわけではない。

「でも本当に、氷に乗った瞬間からは自分達に集中するのが一番なので。トップチームの雰囲気やエネルギーを感じることはできたので、全然自分達にもそのエネルギーはあるなと思います」(村元)

「先シーズンだったら多分びびってよけまくっていたんですけど、今シーズンは特に物怖じするということは、自分の中でもなく。本当に『危ないな』と思ったらよけますけど、ギリギリまでよけない、ということはできるようになったかなと思います」(高橋)

 そして迎えた演技本番、後半グループの最初に滑走した村元/高橋は、出だしからドラマチックな『オペラ座の怪人』を演じている。スケートアメリカ、デニステン・メモリアル・チャレンジと2戦を戦い終え、後半にかなり修正を加えたプログラムだった。

「エレメンツ(要素)で、はっきりとしていない部分があったので。そこをもう少しジャッジと(テクニカル)スペシャリストの方に『これをしているんだよ』というはっきりしたエレメンツを見せたいという思いと、あとは後半のステップも窮屈に感じていたつなぎの部分がたくさんあったので、『もう少し自由にステップができるように』と後半全体を変えました」(村元)

 ただ変更したのは技術面で、「シーズンスタートの時点から、気持ちや見せ方といった部分はほとんど変わっていない」と高橋は説明する。ファントムになり切って滑り出した高橋だが、後半に入ってからは体力の消耗を感じていた。

「気持ちの面では非常に入り込んで滑れたかなと思うんですけれども、後半のパートに入っていくところで足にきてしまったので。『気持ちにプラスアルファして体で表現することができなかったな』というのがちょっとあったので、そこが悔しいところかな」(高橋)

 荒い息のままそう語った高橋は、久しぶりに日本の観客の前で滑る緊張感も体力の消耗につながったと分析した。消耗が激しかったことも原因なのか、高橋は最後の要素であるコレオグラフィック・ダンスリフトで失敗したとも明かしている。頭上から聞こえる村元の「頑張って!」という声に支えられ、「なんとか落とさずに済んだ」と振り返った。

「ファントムなので、自分がクリスティーヌをコントロールするという思いを込めてやったら、ちょっと前半に(パワーを)出し過ぎて。その出した中で、後半までもっていけば…いい課題になりました」(高橋)

 フリーダンスは7位だった村元/高橋は、総合6位で3回目のNHK杯を終えている。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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