日本代表ペア初の五輪入賞は物語の序章 走り続ける“りくりゅう”のゴールは、まだ先にある

沢田聡子

木原の言葉が払拭(ふっしょく)した、三浦の不安

日本代表ペアとして五輪初入賞となる7位の成績を収めた“りくりゅう”ペア。演技終了後、涙があふれた 【Photo by Matthew Stockman/Getty Images】

「全ミスでもいいからね」

 18日に行われたペアのショートプログラムでおかしてしまったミスを気に病んでいた三浦璃来は、フリーが行われる19日朝の練習後にパートナーの木原龍一からかけられた言葉に「私はここが最終地点じゃないんだ。次もあるし、その次もあるし」と思えたという。

「『全ミスでもいいんだ、でもとりあえず昨日と同じ失敗を繰り返さないように絶対(ジャンプの回転で体を)締めよう』と思っていたので、それができて本当によかったです」

 木原も「昨日のショートは、無意識のうちにノーミスを狙いすぎてしまっていて」と振り返る。

「心から楽しめていなかった自分たちがいて。今朝の練習でも二人のタイミングがなかなか合わなくて『どうしたらいいのかな』と思ったんですけど、練習終わった後に三浦さんとしっかりお話をして。『もうノーミスは狙わなくていいんだよね。ただ、全ミスでもいいからとにかく楽しもう』というふうに話をしてから、二人とも気持ちが楽になって。そういう話をして今日試合に臨んで、楽しんでいたらいつも通りやってきたことが出せて、そこから本当にまた『ああ、楽しいな』という思いが入ってきた。今日は、心から楽しんで滑っていたんじゃないかなと思います」

 日本代表のペアとして五輪での初入賞となる7位という成績は、三浦と木原が楽しんで滑ることができた結果だった。
 

メダルに貢献した団体戦後も抱えていた不安

ショート8位発進から、フリーは「笑顔で滑り切れるように」と臨んだ 【写真は共同】

 三浦と木原の長期にわたる五輪での戦いは、団体戦から始まった。2月4日から行われた団体戦では、ショートとフリーに出場。ショート4位、フリー2位という成績で、日本チームにとって初めてのメダルとなる銅メダル獲得に貢献した。

 個人戦に向け、三浦は「少しジャンプでバランスを崩してしまったり、レベルの取りこぼしが本当に多かったので、そこを徹底的に練習して、個人戦では自分たちのベストの演技ができるように頑張りたい」、木原は「レベルの取りこぼしをしっかり修正して、ショートプログラムではしっかりパーソナルベストまた更新できるように。フリーも今日のパーソナルベストを超えられるように頑張りたい」と意気込みを語っている。

 しかし、三浦は失敗を恐れる気持ちが強くなっていた。

「自分が一つミスをしてしまうと、やはりその分順位も落ちてしまうので、絶対ミスをしてはいけないって思いすぎてしまって、私は全体的に見ていい練習はできていなかった。コーチも龍一くんも本当にどうにか笑わせようとしてくれていたのですが、やはり心から笑うことはできなくて」

 そんな気持ちを抱えたまま臨んだ個人戦のショートで、三浦は3回転トウループの予定だったソロジャンプが2回転になるミスをしてしまう。5位を目標にしていた二人だが、このミスが響きショート8位発進となった。

 ショート後のミックスゾーンで、三浦はほとんど言葉を発することもできないほど落ち込んでいた。「大きな舞台で、失敗を恐れてネガティブ志向になった」と悔やむ三浦を、木原は「最後までサポートしきれなかったのが残念だった」と気遣いつつ前を向いた。

「しっかりやってきたことは力になっているので。特にギャンブルのエレメンツが入っているわけではなく、自分たちが自信を持っている技がプログラムに全部組み込まれている。今日のことは忘れて、明日はまた攻めていきたいなと思います」

 力強い木原の言葉に、三浦も「明日は笑顔で滑り切れるように頑張ります」と口にしている。

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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