W杯・日本代表のスペイン対策 『疑似カウンター』を封じ、三笘の1トップ起用で1点を奪え!

清水英斗
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高いボールスキルと機動性を誇り、スペインの攻撃を加速させるペドリ。疑似カウンターの核とも言えるこの19歳の俊才に自由を与えてしまうと、日本は苦しい 【Getty Images】

 日本サッカー界がまだ見ぬW杯ベスト8以上を目指す森保ジャパンの戦いがいよいよ始まる。そこで戦術分析に定評のあるサッカーライターの清水英斗氏に日本の対戦国を分析してもらった。最終回は12月1日の3戦目の相手・スペイン。『疑似カウンター』と表現できる敵の縦に鋭い攻撃を封じた上で、1トップに三笘薫を起用してゴールを奪いたい。

うかつにハイプレスに行けば餌食になる…

 第3戦はゲームの変数が多い。グループステージのラスボス、スペインに対し、日本は勝たなければならないのか、引き分けでもOKなのか。あるいは1点差くらいの負けでも、突破の可能性が残るのか。条件によって、試合の戦略は大きく変わる。

 正直、勝たなければならない状況でスペイン戦を迎えるのは避けたい。元々の実力的にもしんどいが、今回は相性的にも難しいからだ。勝ち点3が絶対に必要だからと、思い切ってハイプレスを仕掛ければ、ルイス・エンリケ監督が率いるスペインには、その焦りを逆手に取られる可能性が高い。

 今大会のスペインは、4-3-3を敷くポゼッション型のチームであることは歴代と変わらないが、最後尾のビルドアップはやや特徴的だ。両サイドバックを高い位置へ上げて2バック気味にするわけではなく、片方を上げて3バックに可変するわけでもなく、そのまま4枚がスタートポジションに留まり、ボールを運ぶ。

 DF間の距離が近く、角度も付いていないので、対戦相手からすればハイプレスに行きやすい。しかし、スペインはその相手を自陣に引き込み、狭いサイドでパスを回してかわした上で、縦パスをつけて一気に相手の中盤を切り裂くのだ。

 2019年頃のJリーグでは、片野坂知宏監督が指揮する大分トリニータの『疑似カウンター』と呼ばれる戦術が話題を呼んだ。自陣でのパス回しで相手のプレスを呼び込み、敵陣のスペースを空けてから、一気に縦へ運んで攻め落とす戦術だ。敵陣にスペースを空けて仕掛ける攻撃はカウンターに似ているが、相手ボールを奪うことが起点ではなく、ポゼッションで相手のプレスを引き込むことが起点であるため、「疑似」と冠詞がつけられた。

 L・エンリケのスペインは、この疑似カウンターが最も怖い。中盤のインサイドハーフの候補であるペドリとガビは、ともに機動力と技術に長け、スペインの縦に鋭い攻撃をダイナミックに加速させる。ウイングの内側を走り抜けたり、1トップのアルバロ・モラタやマルコ・アセンシオに釣られた相手センターバックの背後へ駆け抜けたりと、一気にゴールまで攻め落とす力を持っている。日本がうかつにハイプレスに行けば、その餌食になる可能性が高い。

 かといってミドルゾーンで構えるとすれば、その場合はスペインに主導権を明け渡して数少ないチャンスを待つしかないため、勝ち点3がマストの条件には適さない。だからこそ第2戦のコスタリカ戦までに勝ち点をしっかり稼ぎ、厳しい前提でスペインと試合をしないことが大事だ。
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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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