いよいよカタール・ワールドカップ（W杯）が開幕する。中東初開催、欧州のシーズン真っ只中での開催となる今大会は、はたしてどんなW杯になるのか。ここでは、2002年日韓W杯で日本代表をベスト16に導いたフィリップ・トルシエ元監督に登場を願い、カタールW杯にまつわる気になるトピックに、○か×かで回答していただく。前・後編の2回にわたってお届けするインタビューの第1弾は、大会の全体展望。優勝国は？　ダークホースは？　得点王は？　様々な疑問に答えてもらった。

トルシエ氏の予想「×」

──過去にW杯を連覇した国は、イタリア（1934、38大会）とブラジル（58、62大会）の2つしかありません。前回王者でトルシエさんの母国でもあるフランスは、史上3ヶ国目となる偉業を達成できますか？

トルシエ　まず、1930年代や50年代とは状況が違います。その昔はアウトサイダーと呼べる国も少なかった。現代のW杯では簡単な試合など1つもありませんし、どんな強豪国でもグループリーグからフルスロットルで戦わなくてはなりません。それに昔はチームに3～4人くらいスーパーな選手がいれば、かなり大きな差が生まれたものですが、どの国も戦術レベルが上がった現在はそうでもありません。

　フランスに関して言えば、ストライカーのカリム・ベンゼマ（34歳）、センターバックのラファエル・ヴァラン（29歳）、そしてトップ下のアントワーヌ・グリーズマン（31歳）といった中心選手たちが、いずれも“アラサー”になってしまったことも、W杯という長いトーナメントを戦う上ではデメリットだと思っています（その後、ベンゼマはW杯開幕前日に負傷による欠場が決まった）。オーレリアン・チュアメニやユースフ・フォファナら若い選手も台頭していますが、彼らには国際経験が足りていない。そうした点を踏まえて、フランスの連覇は極めて難しいと判断しました。

──エヌゴロ・カンテ、ポール・ポグバという主力が怪我で出場できないことも、連覇が難しいと判断された理由ですか？

トルシエ　もちろん2人とも素晴らしい選手だし、ディディエ・デシャン監督にとっては戦術上のキープレイヤーでもあったと思いますが、彼らにも年齢的な懸念（カンテが31歳、ポグバが29歳）があります。（準優勝した）2016年のEUROからチームの中心を担い、その6年後の大会でも当時と同じレベルのパフォーマンスができるかと言えば、私は疑問です。カンテがハムストリングの故障に悩まされているのも、年齢と無関係ではないでしょう。彼らがいたとしても、「×」を選んでいたと思います。