連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第28話「新戦術はフリーマン」

木崎伸也 協力:F
アプリ限定
舞台は2038年。11月開催のインド・ワールドカップに向けて、日本代表は監督と選手たちの間に溝が生じていた。
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
 2038年9月、日本代表は2カ月後のインド・ワールドカップ(W杯)に向けて中東遠征を行った。玉城迅は6月に続いて選出され、23人のメンバーに名を連ねた。
 だが今回、玉城の招集はほぼ話題にならなかった。8年ぶりにバルサロナの小高有芯の代表復帰が決まったからである。

【(C)ツジトモ】

 練習初日、ピッチ上で有芯が挨拶する場が設けられた。
 有芯が放った一言は強烈だった。
「みなさん、最近ワクワクしてますかー? 自分の心がスイングしてないと、世界をワクワクなんてさせられません。みなさんが俺をどれだけワクワクさせてくれるか楽しみにしてます」
 挨拶を終えると、有芯は玉城の目をじっと見つめてきた。
 すべて自分に問いかけられたような気がした。
 いったいどうすればバルサの中心選手の心を踊らせられるのだろう。
 自分をよく見せたいという気持ちは、技術の乱れにつながる。基礎的なパス&コントロールの練習で、玉城は有芯へのパスをミスしてしまった。
 すると有芯がスキップしながら近づいてきた。
「タマちゃんってマジメ? ワクワクさせろって言われたら、逆にめちゃくちゃ強いパスを入れて俺の技術を試すくらいしなきゃ。タマちゃんは強気なフリをしているけど、まだまだ人の目を気にしすぎ」
 玉城は矢で射抜かれたように硬直した。なぜスイッチを入れないと強気になれないことがバレた? なぜ人の目を気にしていることを見抜かれた?
 有芯はウインクして言った。
「このチーム、タマちゃんが仕切っちゃお。その方が俺も楽しいから」
 玉城が呆然としていると、ピッチに笛が響き渡った。秋山大監督が紅白戦に移行するように告げ、トレーナーがビブスを配り始める。
 玉城は有芯と同じ組に入った。

GK:クルーガー龍
DF:高木陽介、渋谷寛人、アチェンポン歩夢
MF:水島海、小高有芯、玉城迅、マルシオ
FW:グーチャン、加藤慈英、松森玲王
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ

1/2ページ

著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント