[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第13話「パパのコピーになるな」
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
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前日練習は試合会場となるスタジアムで行うのが通例だ。海浜幕張のホテルにバスが到着すると、ジャージ姿の選手たちが乗り込んでいった。これから約30分かけて千葉アリーナに向かう。
「バスの席順はチーム内のヒエラルキーを表す」
師匠のフランク・ノイマンからそう聞かされていた。玉城迅はバスの中を見渡し、まさにその通りだと思った。
最終列は左からマルシオ、高木陽介、グーチャン。その1列前に水島海とクルーガー龍。5人ともベスト8を達成した2034年ワールドカップ(W杯)時のレギュラーである。チーム内で最も発言力が強い選手たちだ。
最終列から2列前に渋谷寛人と桃川亮太、3列前に加藤慈英と一宮光がいる。まだW杯出場経験はないが、現代表でレギュラーを張ってきた選手たちだ。発言力は劣っても、勢いでは2034年組を優っている。
玉城は選手の中で最も前方に座った。レオも同じ列だ。1~3列目にスタッフがいるため4列目である。
バスに乗る際、気になることがあった。
レオが慈英に挨拶したが、慈英は何も言わず、目も合わさずに通り過ぎたのである。
玉城は小声でレオを慰めた。
「さっきのこと気にするな。ポジションを奪われて、ジェイのやつ、気持ちを整理できてないんだろ」
レオがいつものように微笑む。
「ノープロブレム。はっきりしてる方が好きだぜ。フランス人とか平気でフェイクのスマイルしてくるから」
「ホント、レオってポジティブだよな。虎さんの英才教育のおかげ?」
レオが首を横に振った。
「パパに教育論なんてないさ。コンジョウ、コンジョウ、ドコンジョウ。ボク、12歳のときにドーバー海峡を泳いで渡ってるから」
「すごっ!! 17に見えないワケだ」
「パパの特訓で何度も死にかけてる」
「これ、笑っていいとこ?」
「ダメなとこ」
恵まれた育ちに見えるが、サラブレッドゆえの苦労があるらしい。親子の関係は周囲が思うよりも複雑なのだろう。
【(C)ツジトモ】
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