連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第14話「激突」

木崎伸也 協力:F
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舞台は2038年。11月開催のインド・ワールドカップに向けて、日本代表は監督と選手たちの間に溝が生じていた。
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。
 国道357号を走行中のバス車内――。
 加藤慈英の張り手を松森レオがかわした瞬間、玉城迅は2人の間に体をねじ込んだ。試合前日なのだ。ヒートアップする前に止めなければならない。
 だが、それはマグマに飛び込むようなものだった。ケンカの本気度が違う。慈英が容赦なく左手のひじを振り下ろし、玉城ののど元に直撃した。
「学生、ジャマなんだよ!」
 玉城は呼吸できなくなり、咳き込みながらシートに倒れ込んだ。立ちあがろうとするが、のどに激痛が走って力が入らない。
 慈英は床を蹴り上げて一気にレオとの間合いを詰めると、右手を伸ばして相手の胸元をつかんだ。全体重を乗せて、頭突きを食らわせようとする。
「17のガキのくせに人の未来、語んじゃねェッ!!」
 まるで闘牛の突進だ。
 ところが、イングランド生まれのレオはまたしても驚異的な反射スピードを見せる。
 身をかがめて慈英の頭突きをひたいで受けると、体を捻りながら相手をコマのように回した。
 もみあいながら体勢が入れ替わり、慈英の背中がフロントガラスに激しく打ちつけられる。フロントガラスに小さな亀裂が走った。
 慈英もやられっぱなしではない。レオの腰に両腕をまわし、バックドロップでフロントガラスにたたきつけようとした。レオが咄嗟に手をクロスさせて顔を守る。
 2人とも呼吸が乱れ、胸ぐらをつかんだままこう着状態に陥った。

 その瞬間、こう着を待っていたかのように秋山大監督が叫んだ。
「運転手さん、スピード落として! 手分けして抑え込むぞ!」

【(C)ツジトモ】

 スタッフが2人を引きはがしにかかった。秋山監督がレオを、フィジカルコーチの山田一輝が慈英を羽交い締めにした。
 レオは一瞬体を硬直させたが、抵抗せず、すぐに戦闘モードを解除した。
「ソーリー。みんなのリラックスタイムをじゃましちゃったね。アタックされて、オートマティックに反応しちゃったよ」
 秋山は羽交い締めを解こうとしない。まだ何をしでかすかわからないと疑っているのだろう。秋山は元チームメイトの息子を諭した。
「走行中にケンカって、事故になったらどうするんだ。気性の荒さは父親そのままだな」
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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

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