挑戦を続ける健やかな世界女王・坂本花織 「スケートを続けたい」から、新たな表現に取り組む

沢田聡子

「プレッシャーは感じていない」自然体で臨む今季

力強いスケーティングでグランプリ初戦を制した坂本花織 【Getty Images】

 フリー『Elastic Heart』を滑り終えた坂本花織は、客席から降り注ぐ大歓声の中で、少し悔しそうな顔をした。後半に跳んだダブルアクセルからのコンビネーションジャンプに乱れがあり、3連続を予定していたものの最後のジャンプがつけられなかったからかもしれない。スタンディングオベーションの中で渋い顔をしている坂本には、世界女王であることへの過度な意識は感じられなかった。

 グランプリシリーズ第1戦・スケートアメリカに出場した坂本は、ショート・フリーともに完璧ではなかったものの、貫禄すら漂う滑りで優勝している。

 首位に立ったショート後の記者会見で、世界チャンピオンになって違うプレッシャーを感じているかと問われた坂本は、「正直プレッシャーというものはあまり感じていなくて」と答えている。

「世界選手権が終わってから半年経っているので、気持ちの部分は大分落ち着いているし、毎年毎年の『シーズン初戦に向けて頑張るぞ』という気持ちと今年もほとんど同じ状態で挑めていると思うので。特別プレッシャーを感じていたり、何かを背負ってしまっているというのはないかなと思います」

 今季二つのプログラムを初めて組む振付師に依頼したのは、新たな表現を身につけるための挑戦だ。ジャネット・ジャクソンの『Rock with U』『Feedback』を使うダンサブルなショートは、ジェイソン・ブラウンのプログラムを手がけてきたロヒーン・ワード氏が振り付けている。坂本にとって課題であるという上半身の曲線的な動き、腕と体の連動が多く含まれているという。

「今回ロヒーン先生にお願いしてショートプログラムを作ってもらって、本当に今までにない自分が出せているなという感じがするし、作り上げるのにすごく時間はかかると思うんですれけども、『これを成し遂げられたらすごくかっこいいプログラムになるんだろうな』って思いながら、毎日必死に練習しています」

 そう語る坂本に、守りに入る気配はない。

1/2ページ

著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント