新指揮官、新司令塔でアルバルク東京はどう変わる? ホーム開幕戦から見えたもの

大島和人

A東京の新戦力ジャスティン・コブス 【©B.LEAGUE】

 2022-23シーズンのB1が、24チームの顔ぶれで開幕している。4試合を終了した時点で、負けなしは新昇格のファイティングイーグルス名古屋のみ。連勝の出にくい状態が見て取れる。6シーズンで3度、B1王者となった強豪・アルバルク東京も2勝2敗と混戦に巻き込まれている。ただ7日のホーム開幕戦から、コート内外における飛躍への仕掛けも伝わってきた。

アリーナと指揮官が変わったA東京

 A東京はまずヘッドコーチ(HC)が変わった。チームを2017-18シーズンから3連覇に導いた名将ルカ・パヴィチェヴィッチが退任。2019年のワールドカップで母国リトアニアの指揮を執ったデイニアス・アドマイティス氏が、新たなHCに就いている。

 「家」も変わっている。A東京は過去5季にわたって立川立飛アリーナをホームアリーナにしていた。また2025年秋のオープンを目指して、トヨタグループは東京のお台場に“夢のアリーナ”の建設計画も進んでいる。今シーズンから3季にわたる暫定的なホームとなるのが国立代々木競技場第一体育館。原宿駅や明治神宮前駅、渋谷駅から徒歩圏内の一等地にあり、B1クラブのホームとしては最大規模でもある。

代々木第一開催は満員に

A東京の新ホーム代々木第一体育館 【©B.LEAGUE】

 ホーム開幕戦となった10月7日、8日の千葉ジェッツ戦は両日ともチケットが完売。7日は金曜開催で“着券率”の下がる雨模様だったが、8919名がアリーナに足を運んだ。

 78-66でライバルを下した後、ヒーローインタビューに登場したキャプテンの田中大貴は、ファンにこんな断りを入れていた。

「すみません、ちょっと声が枯れてますけど」

 コロナ禍で声出し応援が認められていないとはいえ、代々木第一は立川立飛アリーナに比べて3倍以上のキャパシティーがある会場だ。今まで以上の声量を出さないと、コート内のコミュニケーションが難しくなっているのだろう。シーズンが終わる頃には選手の“喉”も鍛えられているに違いない。

「チケットが取れない」

 千葉Jのジョン・パトリックHCは、16年ぶりに日本へ復帰した指揮官だ。2005-06シーズンにはA東京の前身・トヨタ自動車で指揮を執っていたキャリアも持ち、日本に知人が多い。以前との違いを問われた彼は、こう口にしていた。

「色んな印象はありますけれど、こういう(大きな)体育館で、チケットが取れない。色んな友達から『チケットが取れないよ』とメッセージが来ていて、それは前にない問題だった」

 新しいアリーナで新しいファンに定着してもらうプロセスは容易でなく、A東京にとってホーム移転のチャレンジはまだ始まったばかり。とはいえホーム開幕戦の来場者数、雰囲気は今後に向けてポジティブな要素だったはずだ。

 A東京は開幕後の4戦を2勝2敗で終えている。バスケット的な変化は手がついたばかりだが、千葉J戦から方向性が浮かび上がってきていた。

相手へ応じたスタイルに

 パトリックHCはドイツで指揮を執っていた時代に、クラブチームの国際試合で、アドマイティスHCと4度対峙(たいじ)していた。

「(A東京は)彼がやっていたネプトゥーナスと非常に似ています。ハーフコートですごいフィジカルにやってくる。チャンピオンズリーグで当たっているけれど、全く同じことをやっていた。リバウンドがキーポイントと試合前に言っていたけれど、デイニアス(アドマイティスHC)のチームにはリバウンドで負けたら大体試合も負ける。そこは変わっていません」

 田中は昨季からの変化について、会見でこう説明している。

「相手の嫌がるようにこちらが攻めたり、相手がやって来ることに対してやり方を変えたりするのは、ルカのバスケであまりなかったこと。相手によってどうするかという、柔軟な対応になってきている」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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