新指揮官、新司令塔でアルバルク東京はどう変わる? ホーム開幕戦から見えたもの

大島和人

基礎から応用へ

アドマイティスHCはリトアニア出身 【©B.LEAGUE】

 Bリーグは「速攻志向」のチームが多いが、A東京はルカHCの時代に手数をかける、緻密なオフェンスを志向してきた。じっくり攻めるハーフコートのオフェンスは、引き続いて彼らの持ち味になるだろう。一方でアドマイティスHCには「相手の分析」を積極的に生かすタイプという違いがある。言い換えるとチームは基礎から“応用”に移ろうとしている。

 選手の顔ぶれに、大きな変化はない。例えばアレックス・カーク、ライアン・ロシター、セバスチャン・サイズのビッグマン3名はそのまま残っている。

 しかし数少ない新加入選手の中に、大きな影響を及ぼしそうな選手がいた。それがポイントガード(PG)のジャスティン・コブス。31歳の彼はアメリカ生まれで、ヨーロッパでキャリアを積んできた。Bリーグの外国籍選手は大半がビッグマンだが、彼は191センチ・86キロの純PG。千葉J戦も“攻撃の起点”として高頻度でボールに絡んでいた。

ミスが少ないコブス

 コブスは技巧を見せつける派手さこそ出していなかったが、技術と判断にミスがなく、安定感が際立っていた。7日の試合は相手のプレッシャーDFに対してA東京のターンオーバーが「13」と増えた中で、コブスは難なくボールを運んでさばいていた。彼個人のターンオーバーは2試合の合計で「2」にとどまっている。

 手堅いプレーの理由を聞くとコブスはまず「コーチ陣のスカウティング」をたたえ、その上でこうコメントしていた。

「千葉(の守備)は非常にアグレッシブに来るけれど、しっかりとボールをケアする、ターンオーバーを防ぐことができたと思います。自分は9年のキャリアがあるので、いろいろな経験を積み重ねてきました。プレッシャーには慣れています。特にピック&ロールに対してはトラップ(ダブルチーム)で来るだろうと予測して、それでミスなくさばけたと思います」

コブスは展開に応じたプレーを見せる 【©B.LEAGUE】

 自身の強みについてはこう口にしていた。

「持ち味はスコアリングで、得点も稼げます。あとは“ゲーム勘”ですね。展開がどのように動いているか、シフトしているか、これを積み上げた経験から感じられるものがあります」

 7日の試合で彼はじっくり展開をコントロールしつつ、13点7アシストを記録している。8日の試合は18点3アシストを記録していて、これは彼の調子というよりも“相手の対応”の違いから生まれたスタッツの差だろう。相手がダブルチームでガードに寄ってくるならばさばく、ゴール下まで切れ込むコースが空いていれば自分が切れ込む――。言葉にすると簡単なことだが、それを千葉J相手に実戦できっちりやり切れる選手は決して多くない。

強豪が変化、進化するシーズンに

 指揮官と司令塔が変われば、チームはそれなりに変わる。ルカ前HCが築いた基礎を生かして、次のステップに進もうとしている。それがA東京のホーム開幕戦を見た率直な感想だった。

 今季は他にも千葉J、宇都宮ブレックスといった有力チームが指揮官を交代させた。となれば選手がほぼ同じでも、スタイルには必ず違いが出てくる。変化はリスクだが、チャンスでもある。2022-23シーズンのB1は強豪が見せる変化、進化を楽しめるものになりそうだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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