Bリーグ2022-23開幕特集

3地区24チームの頂点に立つのはどこか? いよいよ開幕するB1、優勝争いに絡む6チーム

大島和人

昨シーズン王者・宇都宮はHC交代も安定 【(C)B.LEAGUE】

 2019-20シーズンまで18チームで行われていたB1だが、新型コロナウイルスのまん延とクラブ経営への配慮により、3シーズンにわたって「昇格あり/降格なし」の拡大が続いている。2022-23シーズンのB1は24チームに増え、3季ぶりで3地区制に戻った。ただし今季と来季は降格の復活が決定しており、B1とB2が2チームずつ入れ替わる。したがって「残留争い」も一つの焦点になる。

 栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)、アルバルク東京、アルバルク東京、アルバルク東京、千葉ジェッツ、宇都宮ブレックス……。こう書けば熱心なバスケファンはピンとくるはずだが、これは歴代B1王者だ。この3つはすべて東地区所属だった。

 なお今季は3地区制の復活により、東地区2位だった強豪・川崎ブレイブサンダースが中地区に移る。とはいえ8チームが出場するチャンピオンシップ(CS)のフォーマットに大きな変化はない。CSに出場するのは3地区の上位2チームと、残る18チームの中で勝率上位に入る2チームだ。今回は「7代目チャンピオンがどこになるか」という視点で、2022-23シーズンのB1を展望してみたい。

HCの移籍が目立った東地区は激戦必至

 今季のB1は宇都宮、A東京、千葉Jのヘッドコーチ(HC)が入れ替わった。

 ディフェンディング・チャンピオンの宇都宮は安齋竜三HCが退任し、佐々宜央コーチがアシスタントコーチからHCに昇格している。戦術的な継続性は確保されており、選手の移籍はセカンドユニットのガードだったテーブス海、外国籍選手のチェイス・フィーラーの2人のみにとどまった。

 新たに強烈なインパクトを持つ“主役級”の外国籍選手も加わった。ジュリアン・マブンガは2015年の初来日から滋賀、京都、富山と7シーズンにわたってこの国でプレーしているPFだ。ビッグマンながら優れたハンドラー&司令塔でもあり、2018-19、20-21シーズンはB1のアシスト王だった。

 過去の3チームでは完全にエースとしてコートに立ち、負傷さえなければ平均35分以上はプレーしていた。個に依存しない王者のスタイルへマブンガがどう融合するのか?それは宇都宮のファンならずとも気になるポイントだろう。

 宇都宮の陣容を見ると昨シーズンの先発だったジョシュ・スコット、アイザック・フォトゥ、遠藤祐亮、比江島慎、鵤誠司の5人はバランス、連携とも万全だ。一方でセカンドユニットの「火力不足」は数少ない弱みとしてあり、ここにマブンガが入れば問題は一気に解消する。マブンガも決して自分のエゴを勝利に優先させる“俺様キャラ”ではない。宇都宮のスタイルに自らが「合わせる」ことも明言しており、新しいケミストリーが生まれる予感がする。

体制ががらっと変わった千葉J。その影響は果たして… 【(C)B.LEAGUE】

 2020-21シーズンのB1王者である千葉Jは、宇都宮にCSのクォーターファイナルで連敗し、無冠に終わった。さらに今季はクラブの体制が激変した。6シーズンにわたって指揮を執った大野篤史HCは、コーチやスタッフとともに三遠に移籍している。

 新HCに就いたのがジョン・パトリック氏。1991年に近畿大学の留学生として来日し、選手や通訳、コーチとして当時のJBLで4つのクラブに在籍したキャリアを持つ。アメリカ人ながら日本語、ドイツ語が堪能で、近年はドイツで手腕を発揮していた54歳だ。

 プレシーズンではハンドラーを4人、5人と並べる“ポジションレス”のオフェンスと、フルコートの強度が高いプレッシングを見せていた。ハイエナジー、ハイテンポな千葉Jのスタイルを、より過激に進化させている感もある。土日の連戦がスタンダードのBリーグで、あれだけ選手への負荷が高い戦術を導入するリスクはあるだろうが、ハマれば強烈だ。

 「上積み」として期待できる新戦力はヴィック・ロー。201センチ・92キロと細身のウイングプレーヤーで、PGもこなせるスキルと、相手のセンターと難なくマッチアップできる身体能力の高さを持つ異能だ。

ルカHCが退任し新体制となったA東京はどんな戦いをみせるか 【(C)B.LEAGUE】

 昨シーズンのA東京はライアン・ロシター、セバスチャン・サイズといった強烈な選手を他クラブから引き抜いたものの、CSはクォーターファイナルで島根に敗れる不本意な結果だった。5シーズンにわたって指揮を執った名将ルカ・パヴィチェヴィッチも、ついにクラブを離れた。

 もっとも東地区3位とはいえ千葉、川崎と微差で、主力の負傷が相次ぐ不運もあった。ロシターは多彩な得点パターン、リバウンド争奪のうまさ、強烈なリーダーシップを持ち、帰化選手のため外国籍選手の同時起用制限に縛られない。ロシター、サイズにアレックス・カークがそろうインサイドはコンディションさえ取り戻せばB1最強だ。

 SG田中大貴は自らのオフェンス力も高いが、外国籍選手と“生かし生かされる関係”を作れる名手。東京五輪をもって日本代表からは退いたものの、それだけ自チームの活動に時間を割ける。3人目の外国籍選手として、PGのジャスティン・コブスも加わった。吉井裕鷹、小酒部泰暉といった若手のウイングプレーヤーも独り立ちしつつあり、選手の入れ替えは少なくても中身はむしろ濃くなっている感がある。

 新HCには世界的な強豪・リトアニア代表の指揮を執った経験を持つデイニアス・アドマイティス氏が就任した。初来日だけに未知数な部分もあるが、これだけそろった人材をどう“料理”するかが楽しみだ。

川崎1強と目される中地区、対抗馬になるのは…

昨シーズンMVPを受賞した川崎・藤井。チームを悲願のCS王者へと導けるか 【(C)B.LEAGUE】

 中地区の本命は川崎だ。佐藤賢次HCの指揮は4シーズン目で、今季は他チームに移籍した選手もパブロ・アギラール(→長崎)と綱井勇介(→西宮)の2人のみ。つまり継続性が確保されている。昨シーズンのMVPを獲得した藤井祐眞、37歳を迎えても衰えを感じない日本代表(帰化選手)のニック・ファジーカスと“個”も十分にそろっている。天皇杯は2連覇中だが、B1王者の経験がまだない彼らにとって、CS王者は悲願だ。

 補強はピンポイントで、数少ない弱みを埋めるものだった。新加入のマイケル・ヤングジュニアは206センチ・105キロのPFで、ハンドラーとして自ら局面を打開できるタイプだ。「ファジーカスがいない時間帯のオフェンス」という課題を解消するためにはうってつけの人材だ。

 やや薄かったガード陣には、新潟でメインのガードを務めていた納見悠仁が加わった。シュート力、得点力のあるタイプで、PG/SGのどちらでも機能する。明成高では八村塁の同期だった。

 中地区の8チームの中で、昨シーズンのCSを経験しているのは川崎だけ。ただ、あと一歩でCSを逃した渋谷はエースのライアン・ケリーが負傷から復帰し、PG小島元基の加入、日本代表におけるPF井上宗一郎のブレークと明るい話題が大きい。NBAでの実績が豊富なカイル・オクインを獲得した三河、選手とコーチ陣を大幅に入れ替えた三遠も楽しみだ。

 とはいえ川崎にとって中地区のハードルは東地区に比べて明らかに低い。強豪との対戦が4試合から2試合へ減ることは集客や“強化”を考えるとマイナスの側面もあるが、トータルで見ればメリットだろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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