指揮官交代で“ポジションレス”のバスケを追求する千葉ジェッツ 新戦力ヴィック・ローは期待大
千葉ジェッツの新戦力ヴィック・ロー(右) 【(C)CHIBAJETS FUNABASHI/PHOTO:Keisuke Aoyagi】
特に衝撃的だったのは千葉ジェッツ・大野篤史HCの退任だ。彼はBリーグ初年度から千葉のHCを6シーズン任され、天皇杯3連覇や2020-21シーズンのCS制覇など比類なき成果を出した。新興チームを常勝チームに引っ張り上げてファンにも愛された指揮官が、三遠ネオフェニックスに移った。前田浩行アシスタントコーチを筆頭にコーチ、メディカル、アナリスト、通訳、マネジャーといったスタッフも含めて、総勢9名が “移籍”する衝撃的な人事だった。
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従来のスタイルがより“過激”に
チームの主力は、富樫勇樹を筆頭におおよそ残留している。新HCは来日会見で「ハードな守備」「速いテンポの試合運び」といった従来のスタイル継続も口にしていた。だから昨季までのベースがそれなりに保たれているだろうと踏んで、2日のプレシーズン初戦を取材した。実際にそこで見た彼らのバスケは、いい意味で予想を上回る“過激”な内容だった。
守備はフロントコートからかなり近い間合いで相手に迫り、しつこく張り付いてはがされない。千葉はさながら往年の能代工業を彷彿(ほうふつ)とさせるような足を使ったプレスを見せていた。対戦相手の富山グラウジーズは1試合に15個のターンオーバー(※以下のスタッツは千葉が取ったもの)を喫したが、プレッシャーの激しさに苦しんでいた。
タイトなプレスが奏功
千葉ジェッツのジョン・パトリック新HC 【写真は共同】
「7日間の練習のあとで、B1のチームを相手に最初から最後まで激しいディフェンスをやれた。オフェンスはリズムが崩れて、ちょっと疲れていたときもあったけれど、いい流れを作れてとても満足しています。結構プレスが成功して、ターンオーバーをさせたときもあったし、ファストブレイク(速攻)から簡単な得点も取れた。もちろん直さなければいけないことはありましたけど、選手たちは非常に頑張ってくれていると思います」
プレシーズンなので結果は度外視されるし、そもそも各チームの選手もそろわないケースが多い。千葉も直前の代表戦に出場した富樫勇樹、来日直後のギャビン・エドワーズが欠場していた。この試合に至るまでに消化した全体練習は7日で、一度も10人がそろわず、まだ「5対5」のメニューはできていない状態だったという。
ただ結果や到達度は別にして、千葉のやろうとしているプレーがシーズン最初の40分から明白に伝わってきた。
身体能力抜群でPGもこなせる新戦力
201センチという身長に対して92キロの体重は、バスケ選手としてかなり細い。一方で彼にはそれを補ってあまりあるスピードとしなやかさ、身軽さがあった。
1日の富山戦では第1クォーターに3ポイントシュートを2本連続で成功させるなど、26分34秒の出場で合計18得点。跳躍力を生かして7リバウンドを奪い、ブロックショットも1つ決めた。富樫不在の中でポイントガード役を任される時間もあり、ドライブやパスのスキルも見せていた。
Bリーグの中ではジュリアン・マブンガ(宇都宮ブレックス)やドウェイン・エバンス(広島ドラゴンフライズ)と似たスタイルだが、ヴィック・ローはよりクイックで、アスリート性が高い。分かりやすく言えば身体能力が抜群だ。ただ彼からはそれ以上の“プラスアルファ”を感じた。