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理想と現実の間で見た“ジェッツらしさ”
コロナと戦う「プロジェクト」の裏側
3月14日・15日に行われた無観客試合は、さまざまな思いが交差したイベントとなった
3月14日・15日に行われた無観客試合は、さまざまな思いが交差したイベントとなった【(c)CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:JunjiHara】

 Bリーグ千葉ジェッツふなばしのある試みが、競技を超えた広報担当者から支持を集め、スポーツPRカンファレンス(※1)のアワードでグランプリを受賞した。その名を「コロナに笑利project」という。


 SNSのちょっとした発信からスタートしたプロジェクトは、無観客試合の仕掛けでメッセージが社会に広く刺さり、さらに選手や地域を巻き込んで進んでいく。その過程は手作りで、人間的なものだった。


 スタッフたちが挑戦した社会にメッセージを届ける、ファンと選手をつなぐといった目的は素直に正しい。しかしプロスポーツの運営には夢と同時にコスト、マンパワー、時間といったシビアな問題が伴う。


 クラブスタッフは様々な制約の中で、どう現実と折り合いをつけたのか。そしていかに会社にとってもメリットのある形でチャレンジを進めたのか――。連載第2回はそんな裏方目線で、3月14日・15日に予定されていた無観客試合を振り返る。


※1 「スポーツPRカンファレンス」はJリーグ、Bリーグとスポーツナビの3社が協力し、さまざまなスポーツ団体のPR担当者が競技を超えた情報共有や学び、交流を行うイベント

「相手や日本全体へ届くメッセージにしたい」

 新型コロナウイルス問題で2月末に中断されたBリーグは、3月中旬にリーグ戦を無観客で再開させた。千葉ジェッツふなばしはその時点でアルバルク東京、宇都宮ブレックスの東地区二強と2勝差。ホーム船橋アリーナで開催される無観客試合は、東地区の上位争いを左右する大一番でもあった。 


 時間や費用という敵と戦いながら、スタッフは“ジェッツらしさ”を表現しようともがいていた。コロナ禍の中で、周囲には自重を求める声もあった。それでも芳賀宏輔、平野愛実の二人は何ができるかを探り続けていた。


 事業推進部の芳賀は説明する。


「とにかくコストをかけない中でも、お客さんに喜んでもらえるものを平野と考えました。行き着いたのはコレオグラフィと、“言の葉の翼”でメッセージを張り出す企画です。外注したらそれだけでお金がかかるので、ほとんど自分たちの手作りですね。コレオグラフィとメッセージを制作するだけなら、実は5万円以下。人件費を入れるともう少しいくかもしれないですけれど、最低限でできるように工夫して実施しました」


 コレオグラフィのメインであるメッセージを並べたのはベンチ裏で、中継ではメインのカメラが映す側だ。1階席は「GO JETS」の6文字を入れることが早々に決まった。問題は2階席に並べる文字列だった。


「あのような状況下だったし、『#コロナに笑利』のハッシュタグも使い始めていました。あとウチのチームだけでなく、相手や日本全体へ届くメッセージにしたいと思いました。バスケットLIVEなどで抜かれたときに、内々だけのメッセージだと相手への敬意を欠いているのでは? と見られる可能性もあった。それで『コロナニショウリ』で決定しました」

制約をアイデアで乗り越えイベントに

船橋アリーナの2階ベンチ裏の840席は、「コロナニショウリ」の文字がぴったりと入る大きさだった
船橋アリーナの2階ベンチ裏の840席は、「コロナニショウリ」の文字がぴったりと入る大きさだった【(c)CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:JunjiHara】

 費用を節約するため、芳賀は自力でコレオグラフィのデザインにチャレンジした。芳賀は説明する。


「デジタルは強くないので……。実際の席と同じように、エクセルシートを作りました。赤と白に分けて『コロナニショウリ』『GO JETS』とはめ込んで、ドット絵みたいにやりました」


 船橋アリーナの2階ベンチ裏は縦8×横105の840席。「コロナニショウリ」の8文字を並べるために、ちょうどいい大きさだった。


 赤と白の紙も費用をかけずに調達した。


「チャンピオンシップや天皇杯に行ったときに、ブースターさんにお配りする“GO JETS”のボードは表が赤、裏が白になっています。デザインチームに話をしてそれを用意してもらいました。サイズも椅子に合ったんです。いつもだと50人から100人くらいスタッフがいるんですけれど、あの試合はスタッフをかなり削らなくてはならなかった。前日に20人くらいでバーっと席に貼って、2時間くらいはかかっていました」


 もちろん試合前の準備作業は、コレオグラフィの制作にとどまらない。


「どこまで何をやったらいいのかも分からない状況下で、各部署が本当にバタバタしていましたね。トップのスポンサーは百社くらいあるんですけれど、そこにどう対応をするかという動きはずっとしていました。返金をするのか、違うものを価値として提供してご了解いただくか。例えば来シーズンの看板、活動を増やしてご納得いただけるのか……という調整はずっとしていました」


 千葉はBリーグ最大規模のクラブだが、プロ野球やJリーグに比べれば動かせるリソースが小さい。船橋アリーナについていえば広告、メッセージなどプレー以外の映像を映し出すリボンビジョンも用意されていない。そんな制約ともスタッフは戦っていた。

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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