連載:甲子園レジェンド名将対談

タイブレークや球数制限は必要か?佐々木朗希の登板回避は… 渡辺元智と前田三夫が真剣討論

瀬川ふみ子
アプリ限定

高校球児を指導する現場は、昔と比べ、どのように変化しているのか。渡辺元監督が説く、望ましいチーム作りとは 【撮影:白石永(スリーライト)】

 時の移ろいとともに、高校野球界も変化を遂げている。第一線で名門校の指揮を執り続けてきた横浜高・渡辺元智元監督と帝京高・前田三夫元監督は、その変化をどのように感じていたのか。近年何かと話題に上るタイブレークや球数制限についても熱弁を振るった。なお、今後も二人が選ぶ甲子園のスターや「横浜vs.帝京」歴代最強オーダー、高校野球界の未来など全8話にわたって連載していく。(取材日:6月30日)

名将が若い世代の指導者に伝えたいこと

――長く高校野球の指導をし、甲子園で優勝するなど数々の実績はもちろん、選手育成の両方を成し遂げてきたお二人に、近年の高校野球を見て思うことを教えていただきたいです。

渡辺 時代がどんどん変わり、環境も変わってきて、最近は野球もどんどん変わってきています。一番思うのは“個人主義”になっていることです。以前は「俺についてこい!」っていう中で監督が厳しくやっても選手がついてきて、そんな選手たちを監督がまとめて戦ってきました。でも今は、選手が「自分だけ良ければいい」という風潮になって、チームがバラバラになっています。“ワンチーム”になれていない。以前のような指導は難しくなっています。

 そんな“個人主義”になっている選手をまとめるにはどうしたらいいか、それには個人をうんと伸ばしてチームに還元する、生かす、という考えです。選手も監督に厳しく指導されない中、「自分でやらなきゃいけない」と感じれば一生懸命やるでしょう。でもそうすると、今度は、いくら良い采配ができても、“個”をまとめられる監督に、“選手という人間を束ね、まとめる力”がないと、“チーム”を作っていくことはできないです。難しい時代です。

前田 渡辺さんから“個人主義”という言葉が出ましたが、今は、“選手ファースト”です。以前は選手を鍛えて追い込んでチームを2年数カ月で作ることができた。でも、今は鍛え上げようとしても時代的なこともあり、追い込めない。何のために監督がいるんだってことを考え、選手に問いかけ、働きかけ、自分で気付いていくことを期待して待つしかない。ここ数年は未完成のまま最後の夏を迎えていましたね。難しくなっています。

渡辺 高校野球はプロ野球など成人した大人の野球とはまた違います。一番持ちこたえられる中学生、高校生の頃に我慢を教えていくことで、人間としての土台を作ることができたんですが、厳しく指導できない昨今、いつ我慢を教えるのか……。
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント