日本の「中3日プラン」は破綻している? チュニジア戦で露呈した特定選手への依存

宇都宮徹壱

キリンカップサッカー決勝の相手はチュニジア。試合会場のパナソニックスタジアム吹田は、あいにくの雨だった 【宇都宮徹壱】

プレーオフに勝利したオーストラリアと本大会を見据える日本

 キリンカップサッカーの決勝戦、日本vs.チュニジアが行われる6月14日の朝、大陸間プレーオフの結果がネット上で話題になっていた。現地時間13日にカタールで行われたオーストラリアvs.ペルーの試合は、スコアレスドローのままPK戦までもつれ、オーストラリアが勝利した。これで、5大会連続6回目のワールドカップ(W杯)出場。アジアからは開催国カタールを含めて、最多6カ国が出場することとなった。

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 この1週間前の6月7日には、同じカタールでアジア5位決定戦が行われ、オーストラリアは2-1でUAEを下して大陸間プレーオフの挑戦権を得ている。日本が本大会を見据えた親善試合を繰り返している間、同じグループのライバルだったオーストラリアはカタールで「絶対に負けられない」2試合を戦っていたのだ。昨年10月21日、埼玉スタジアムでの直接対決の結果(○2-1)が逆になっていたら――。そう考えると、肌があわ立つのは私だけではないだろう。

 ドイツ戦やスペイン戦を想定した、欧州勢とのマッチメークはできなかったものの、ここまでの日本は非常に良いシミュレーションができていると思う。個々の結果や内容はともかく、この6月シリーズの4試合をトータルで考えたとき、その設計に関してはポジティブに評価されてしかるべきだろう。何より「中3日での戦い方」について、さまざまなシミュレーションができたのは大きかった。

 奇しくも20年前の6月14日は、2002年W杯で日本はチュニジアと対戦、2-0で勝利している。当時の日程を振り返ると、ベルギー戦が6月4日でロシア戦が6月9日。いずれも中4日での対戦だったので、日本はグループステージ3試合をほぼスタメン固定で戦うことができた。しかし今回のカタール大会は、いずれも中3日。第1戦がドイツ、第3戦スペインとなると、第2戦は大幅なターンオーバーが濃厚だろう。

 この6月シリーズで森保一監督は、2つのグループを準備して交互に試している。なるべく多くの選手にチャンスを与え、さまざまな組み合わせにトライしたい思いもあっただろう。その一方で、本大会の中3日での戦い方を、この4試合でシミュレーションしようとする意図は明確。このチュニジア戦は「キリンカップ決勝」という意味合い以上に、グループステージ第3戦を意識した戦いになると見られていた。

遠藤と吉田が狙われ、三笘のドリブルも封じられた

後半途中から出場した三笘(右)は得意のドリブルで見せ場を作ったものの、チュニジアに研究されていた感は否めなかった 【Photo by Kaz Photography/Getty Images】

 試合会場はパナソニック吹田スタジアム、そして天候は雨。雨の吹田での代表戦といえば、どうしても昨年9月2日のオマーン戦(●0-1)を思い出してしまう。とはいえ、あの試合以上にショッキングな結果になるとは、このときは予想しなかった。そしてチュニジアが、オマーン以上に日本対策を練ってきたことも。

 日本のスターティングイレブンは以下のとおり。GKシュミット・ダニエル。DFは右から長友佑都、板倉滉、吉田麻也、伊藤洋輝。中盤はアンカーに遠藤航、インサイドに原口元気と鎌田大地、右に伊東純也、左に南野拓実。そして1トップは浅野拓磨。ガーナ戦からメンバーを8人替えたオーダーとなった。

 前半は日本がチャンスを作り、ゲームを支配しているように見えた。ところが記録を見ると、前半の日本のシュートはゼロ。前半28分に南野、35分に鎌田がビッグチャンスを迎えるが、いずれもミスキックとなってしまう。そんな中、チュニジアは遠藤からの配球を封鎖。さらにはデュエル王からボールを奪って、ショートカウンターからチャンスを作ろうとさえした。前半は0-0で終了。

 ハーフタイム、日本ベンチは原口に替えて田中碧をピッチに送る。中盤の構成が変わったことで、遠藤へのプレッシャーは軽減された。すると今度は、日本のディフェンスの裏が狙われるようになる。後半8分の吉田によるPK献上は、そうしたチュニジアの戦術変更が奏功する形で生まれた。これをモハメド・アリ・ベン・ロムダンにきっちり決められ、日本は後半10分に先制点を許してしまう。

 後半15分、日本は鎌田と浅野を下げて、三笘薫と古橋亨梧を投入。しかしチュニジアは、三笘対策もしっかり用意していた。ドリブルで1枚目をはがされても、2枚目がクロスをブロックし、さらに3枚目がクリア。日本の攻撃が手詰まりを見せる中、またしても日本のキャプテンが狙われる。

 後半31分、チュニジアGKからのロングボールが吉田の背後に落下。対応が遅れてユセフ・ムサクニにボールを奪われ、最後はフェルジャニ・サシがネットを揺らした。さらにアディショナルタイムには、ハーフウェイライン付近でイーブンになったボールを吉田が回収できず、イサム・ジェバリのドリブル独走を許してゴラッソを決められてしまう。0-3という、誰も予想しなかったスコアで、日本はチュニジアに屈した。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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