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J1月間MVPは名古屋GKランゲラック「今季はキャリアの中でベストシーズン」

飯尾篤史

来日4年目を迎え、充実のシーズンを送るランゲラック。「日本に、グランパスに来てよかった」 【(c)J.LEAGUE】

 9月度の「2021明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に、名古屋グランパスのミチェル・ランゲラックが選出された。9月のリーグ戦で無敗だっただけでなく、シーズンの無失点試合数の新記録も達成した。名古屋の堅守を最後尾で支える守護神はオーストラリア代表からの引退を表明し、家族との時間を大切にするとともに、名古屋のタイトル獲得に向けて全身全霊を捧げる。

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最も記憶に残っているセーブは…

――9月度の明治安田生命JリーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。GKがこうした賞に輝くことは珍しいと思います。率直な感想を聞かせてください。

 おっしゃるように、こういう賞にはたくさんゴールを決めた選手が輝くことが多いので、GKの私にとって非常に名誉なことです。チームを助けることができて本当に幸せです。

――名古屋グランパスは9月のリーグ戦で3勝1分けでした。さらに9月26日の大分トリニータ戦では、J1史上最多となる19試合無失点のシーズン記録も樹立しました。ランゲラック選手の好セーブもさることながら、今シーズンは例年以上に粘り強く、タイトな守備が光ります。

 我々はチームとしてしっかり守る意識が高く、みんな一生懸命ハードワークをしています。相手にチャンスを与えないだけでなく、相手のボールホルダーをしっかりつぶしてもいます。メンタリティーも強く、ユニットとしての結束も強い。攻撃の選手たちもしばしば帰陣して助けてくれるので、守備に関してはみんなが同じ方向を向いてやっています。みんながこれだけ頑張ってくれるので、最後に控える私は自分の仕事に集中することができる。これが安定している要因だと思います。

――9月18日の横浜F・マリノス戦では終了間際のレオ・セアラ選手のシュートを、22日のFC東京戦では前半終盤にディエゴ・オリヴェイラ選手、レアンドロ選手のシュートを、後半に三田啓貴選手のシュートをセーブしたシーンが印象に残っています。ご自身が思う9月のリーグ戦の会心のセーブは?

 ひとつに絞るのは難しいんですけど、マリノス戦のセーブだと思います。あの試合は我々がリードしていて、マリノスが1点を返し、なおも同点を狙って攻めてきたなかでのセーブでした。チームを助けるプレーだったということで、特に記憶に残っています。

――この試合は2-1で逃げ切りましたが、相手にボールを保持される時間が非常に長かったですね。相手に持たせている感覚だったのでしょうか? それとも、もう少し保持したいと感じていたのでしょうか?
 
 マリノスはとても攻撃的なチームですから、どうしても彼らのボール支配率が高くなります。私たちももっとポゼッションできれば良かったんでしょうけど、マリノスはシーズンを通してどの試合でもポゼッション率が高いですから、仕方のない面もあります。そういう意味では、彼らは彼らのサッカーをやったと思いますが、私たちも自分たちのサッカーができた試合でした。簡単にはゴールを割らせませんでしたし、少ないチャンスをしっかりモノにできました。そして重要なのは勝つこと。来季のAFC チャンピオンズリーグ(ACL)出場を狙ううえで大事なゲームでしっかりと結果を出せたので、私はあの試合に満足しています。

ACLを経験してたくましくなった

ACLのタイラウンドとその後の隔離期間は困難だったが、それをに乗り越えて今の好調がある 【スポーツナビ】

――新加入のヤクブ・シュビルツォク選手のゴール量産も、9月の名古屋好調の要因だと思います。この新ストライカーについては、どうご覧になっていますか?

 とても頼もしい選手がチームに加わってくれたと思います。新しい選手はチームにフィットするのに時間がかかるものですが、彼はすでに自分をチームに同化させています。それだけでも彼の能力の高さがうかがえます。ストライカーとして結果を残せるところが彼の最大の魅力ですし、これからもハードワークしてチームに貢献してほしいと思っています。私もサポートできることはしたいと思っています。

――6月から7月にかけてのACLでタイから帰国後の1カ月は、成績が芳しくなく苦しんだ印象です。その後、成績が上向いていきましたが、“帰国後の1カ月”は選手としてどう感じていましたか?

 タイでのラウンドは結果、突破することができましたが、練習も試合も環境もハードで正直、難しかったです。気分転換に外に出ることもできませんでしたから。帰国後は隔離期間があり、しばらく家族とも会えませんでした。ここでもメンタル的に難しかったので、その後の結果に関しては仕方のない面もあると思います。ただ、チームとして調子を取り戻すことができたのは、ACLを経験してたくましくなった証しではないでしょうか。

――今季を振り返ったとき、4月29日の豊田スタジアムでの川崎フロンターレ戦はショッキングな敗戦(0-4)だったと思います。あの試合について、どう感じていますか? あの試合から学んだこと、得た教訓などはありましたか?
 
 川崎が素晴らしいチームなのは間違いないですが、あの試合は私たちパフォーマンスが悪すぎました。負けるべくして負けたゲームだったと思います。何かを学んだり、教訓を得たというより、まだシーズン序盤で、その先も続くわけですから、切り替えることが重要だったと思います。サッカーでは勝つこともあれば、負けることもある。あの試合では勝ち点3を失いましたが、失った勝ち点を取り戻すためにも、私たちは強い気持ちで前に進んできました。それが今、ACL、YBCルヴァンカップ、天皇杯で勝ち残り、リーグ戦で上位争いができていることにつながっていると思います。

――18年、19年は風間八宏監督のもとで攻撃的なスタイルを志向しました。一方、19年途中からマッシモ・フィッカデンティ監督が就任して、守備が武器のチームに変わりました。振れ幅が大きいですが、その変化をどう受け止めてきたのでしょうか?

 風間監督はしっかりとした哲学を持っていて、私自身学ぶことが多かったです。ただ、なかなか結果が出ませんでした。クラブはステップアップすべく監督交代という決断を下したと思いますが、サッカーは結果がすべてですから、こうしたことは世界中で起こり得ます。その後、フィッカデンティ監督がやってきて約2年半ですか。風間監督が築いたものを引き継ぎながら上積みをしていて、とてもいい仕事をされていると思います。特に今シーズンはチームが同じ方向を見ていて、結果も出ています。私たちをうまく導いてくれていると思います。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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